新国立「ウィリアム・テル」 長年の念願がかなった!
2024年11月26日、新国立劇場でロッシーニ作曲のオペラ「ウィリアム・テル(ギヨーム・テル)」をみた。
「ウィリアム・テル」は、小学校5年生の時(たぶん、1961年)、学校の音楽の時間に鑑賞曲として、その序曲を聴いて天地がひっくり返るような感動を覚えて、私がクラシック好きになるきっかけを作ってくれた曲だ。当時、「序曲は名曲だが、本編は長くてつまらないので、現在では上演されない」といわれていた。そんなものかと思っていたが、1970年代のロッシーニ・ルネサンスの後、CDや映像でこのオペラを知って、いやいやなかなかの名作ではないかと思っていた。今回、念願がかなって初めてオペラをみた。素晴らしかった!
まず歌手陣がいい。テルのゲジム・ミシュケタはこの役にふさわしい強くて深い声。音程もよく、声量も豊か。アルノルドのルネ・バルベラも高音が美しく、これまた声量豊か。そして、マティルドのオルガ・ペレチャッコは本当に美しい声! そして、皇女にふさわしい気品ある動きと容姿。これまで何度かペレチャツコの実演を聴いて、もっと声量豊かだった気がしたが、少し声が小さかった。あえてそうしていたのか。ジェミ役の安井陽子も声が通って、少年らしくて見事。そして、冨平恭平の合唱指揮による新国立劇場合唱団も本当に見事。このオペラは合唱が重要だが、見事に大きな感動をもたらしてくれた。
そのほか、エドヴィージュの齊藤純子も好演、ジェスレルの妻屋秀和、ヴァルテルの須藤慎吾、メルクタールの田中大揮、ロドルフの村上敏明、リュオディの山本康寛、ルートルドの成田博之、狩人の佐藤勝司も健闘。
それぞれのアリアも素晴らしかったが、第1幕のアルノルドとテルの二重唱、第2幕のアルノルドとマティルデの二重唱、第4幕のマティルデ、ジェミ、エドヴィージュの三重唱も本当に見事。ロッシーニの世界を堪能できた。ただ、ロッシーニにしては、いずれの歌もそれほど技巧的ではない。歌手の名人芸を楽しむというよりは、歴史群集劇の厚みを味わうオペラだと言えそうだ。自由を求めて戦う民衆の歌声に何度も深く感動した。
指揮の大野和士はむりやり盛り上げようとせず、じっくりと演奏。それが成功していると思う。一つの歴史絵巻のように圧政に抵抗するスイスの民衆の重厚な物語に仕上げていた。東フィルも美しくて輪郭のしっかりした音。
ヤニス・コッコスの演出も簡素な舞台ながら説得力がある。第1幕、第2幕は森の中、第3幕のジェスレルの圧政を描く場面は、いくつもの槍が上から刺さるような構図。自由を求めて立ち上がる民衆をうまく描き出していた。
私は、この「ウィリアム・テル」よりも、「セミラーミデ」や「アルミーダ」、「湖上の美人」の方がオペラとしては傑作だと思う。フランス語による、いわゆるフランス・グランド・オペラに属するオペラなので、バレエが入ってくるのはやむを得ないが、舞踊好きではない私にはバレエの部分はちょっと退屈。だが、さすがにロッシーニ最後の作品だけあって、堂々たる構えで、これはこれで見事な作品だと思った。
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