エーネスのベートーヴェン初日 清澄にして繊細なヴァイオリンの音色!
2024年11月14日、紀尾井ホールでジェイムズ・エーネス ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会の初日を聴いた。ヴァイオリンはエーネス、ピアノはオライオン・ワイス。初日はソナタの第1番から第5番「春」まで。
エーネスの名前はかなり前から聞いていたが、実演を聴くのは今回が初めて。素晴らしい演奏だった。
エーネスはきわめて素直な演奏だと思う。何も付け足さない、何も減らさない。誇張もせず、テンポも動かさない。もう少しユーモラスにしたいところやら、劇的にしたいところ、ロマンティックにしたいところもあると思うのだが、そうはしないで真正面から演奏。しかし、なんと高貴で清澄な音色であることか。そして、繊細でありながらも切れの良い弓さばき、きわめて理にかなった音楽の流れのために、自由で伸びやかな雰囲気が漂う。ぐいぐいと観客の心をとらえる。ピアノのワイスも繊細でシャープな美しい音でヴァイオリンとぴたりと合っている。
第1番はちょっとぎくしゃくしていたかもしれない。客席の音のせいで、少なくとも私は音楽に集中できなかった。しかし、第2番からは私はエーネスの音楽世界に入り込んだ。作曲順に演奏されるので、ベートーヴェンの成長もよくわかる。初々しくて素直な第1番、自由な雰囲気のある第2番、徐々にスケールが増し、ベートーヴェンらしくなる第3番。そして、休憩をはさんで本格的なベートーヴェンの音楽になっていく第4番と第5番。若きベートーヴェンの喜びと悲しみの心の襞が見えるかのような演奏だと思う。しかし、あくまでも知的で構築的であって、情緒に流れることはない。そうであるこそ、そのリリシズムにため息が出そう。
アンコールは第6番の第2楽章。本当に清澄で繊細。この全曲を16日に聴けると思うと楽しみでならない。
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