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カプワ&ティベルギアン&日フィル カプワの指揮に驚嘆!

 20241130日、サントリーホールで日本フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会を聴いた。指揮は沖澤のどかの予定だったが、出産のためにパヴェウ・カプワに変更。ポーランド出身の若い指揮者だ。まったく初めて名前を聞く。曲目は前半にセドリック・ティベルギアンが加わってブラームスのピアノ協奏曲第2番、後半にシューマンの交響曲第2番。素晴らしい演奏だった。驚いた。

 ティベルギアンのピアノはイブラギモヴァのヴァイオリンとのデュオで何度か聴いたことがある。今回も見事な演奏。音の一つ一つの粒立ちが美しくて繊細だが、十分にダイナミック。ブラームスにふさわしい。知的でロマンティックすぎないが、十分に叙情にあふれている。

 が、私が驚いたのはむしろカプワの指揮のほうだった。ブラームスの協奏曲では、おそらく格上のティベルギアンに遠慮していたのだろう。全体的な構成はかなりオーソドックスに思えたが、ピアノをたてて、おそらくはティベルギアンの音楽を作っていた。ただ、細部ではかなりオーケストラにニュアンスを加えていた。ブラームスらしいがっしりした構成の中に、微妙なニュアンスが顔を出してとても魅力的な演奏だった。素晴らしかった。

 カプワの本領が発揮されたのはシューマンだった。ひとことで言うと、まるで交響詩のような交響曲だった! もしかしたらシューマン好きはこのような演奏を嫌うのかもしれない。が、私のように、「メンデルスゾーンやブラームスに比べてどうもシューマンはおもしろくない、とりわけ交響曲第2番は退屈だ」と思っている人間には、これは目を見張るようなおもしろい演奏だった。

 山あり谷あり、様々な仕掛けがあり、適度にクライマックスがあり・・・。映画でも見ているよう。もしかすると、指揮者は頭の中で何かのストーリーを想像しているのかもしれない。とりわけ第2楽章はユーモアにあふれ、盛り上げた後のちょっとした肩透かしのような部分もあった。第3楽章はとても美しリリシズムにあふれていた。第4楽章はまさしく賛歌。よくぞここまでおもしろく演奏できるものだ。

 しかも、まるで交響詩のよう、と言いながら、それほど元の音楽をいじっているわけではなさそうだ。十分に理にかなっている。あれ、もしかしたらシューマンのこの曲は本来、このように演奏するべきだったのかもしれない!と思わせるほど説得力がある。

 私以外の人はこの演奏をどう受け取ったのだろう。もし、ベートーヴェンまでもこのように演奏したら私はきっとムッとすると思うが、この人が古典派を演奏したらどうなるのだろう。ブラームスの交響曲も是非聴いてみたい。

 沖澤のどかの指揮を聴けなかったのは残念(もちろん、ご本人にとってはとてもめでたいことであり、私も遠くから祝福させていただきたい)だが、カプワという指揮者を知ることができて、とてもありがたかった。

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コメント

私も同じ日に聴いていました。カプワという指揮者は、国際コンクールに優勝したわけでもなく、どこかの有名オーケストラにポストを持っているわけでもなく、まったく無名の指揮者だと思いますが、音がクリアでバランスが良く、とても感心しました。たぶん耳がいいんでしょうね。日本フィルはいい指揮者を発掘したと思います。

投稿: Eno | 2024年12月 1日 (日) 17時14分

Eno 様
コメント、ありがとうございます。カプワという指揮者、これからが楽しみですね。私は、語り口のうまさに特に驚いたのですが、確かに音のコントロールが見事でしたね。クリアでバランスがいいからこそ音楽の表情をコントロールできたのだと思います。
ブログ、拝見しています。とりわけ、コンヴィチュニー演出「影のない女」、「田中一村展」「ウィリアム・テル」を興味深く読ませていただきました。とても参考になりました。ありがとうございます。

投稿: 樋口裕一 | 2024年12月 2日 (月) 09時00分

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