福生市民会館「こうもり」 楽しかった!
2024年12月28日、福生市民会館大ホールで、当会館の音楽監督・又吉秀樹氏の監修によるオペレッタ「こうもり」(ピアノ伴奏・日本語上演)をみた。
先日のコンサートでこの公演のチラシをもらった。又吉さんの人脈なのだろう、歌手陣が豪華。これは福生まで行かずばなるまいと思ったのだった。
ピアノ伴奏は河原忠之。序曲の冒頭部分では、まだ指が温まっていなかったのだろう、ミスタッチが目立ったが、すぐに立て直し、このオペレッタにふさわしい雰囲気を作り出した。さすがというしかない。巨匠の手腕というべきだろう。
演出は吉野良祐。又吉さんの発案なのかもしれないが、ご当地ギャグをふんだんにいれた、元の台本からしばしば離れる日本語台本。途中、子どもたちの合唱団が登場して、別の曲(「ヘンゼルとグレーテル」?)を歌ったり、舞台上にいた大人の合唱団が日本の合唱曲を歌ったりと、かなり自由な出入りのある上演だった。いずれも福生市民中心の団体のようだ。
オペレッタなので硬いことを言っても仕方がない。なかなか楽しい。ただ、「十人十色」という言葉が頻出し、「多様性」を強調する台本だったが、このオペレッタのどこに多様性のテーマがあるのかよくわからなかった。むしろ、性的少数者を表現しているとみられるオルロフスキーを子どもに演じさせて、そうしたテーマを薄れさせているように思えた。それにしても、なぜ、オルロフスキーを子どもにしたのか、私には納得できなかった。セリフ回しについては、驚くべき才能の少年だったが!
歌手陣はまさに日本を代表する名歌手たち! 日本語なので、むしろ歌いにくかっただろうが、みんな見事に克服している。アイゼンシュタインの大沼徹は素晴らしい。楽しんで歌っているのがよくわかる。声が伸びて、音程も完璧。肩の力を抜いた演技もおもしろい。ロザリンデの田崎尚美も豊かな声量で、チャルダーシュも迫力満点。アルフレードの中島康晴も、しっかりした美声でこの役にふさわしい。
そのほか、ファルケの大川博、フランクの三戸大久、オルロフスキー(代理)の吉田連、アデーレの肥沼諒子、ブリントの高橋淳。いずれも見事。とりわけ、ブリントの高橋さんの絶妙の演技に脱帽。そして、フロッシュをなんと又吉さんご自身が演じた。ユーモアのセンスのある方だけに観客をうまくのせて舞台を楽しくした。高橋さんや又吉さんのような芸達者な人が脇を固めてこそ、オペレッタは生きてくる!
又吉さんが音楽監督に就任して、福生市民会館はこれからクラシック音楽の企画を進めていくという。「こうもり」はまさに又吉さんお得意の演目だったわけだが、これからの手腕が問われることになるだろう。楽しみだ。私としては、福生がオッフェンバックやレハールなどのオペレッタの聖地になってくれるととてもうれしいのだが・・・。
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