ケンショウ・ワタナベ&東フィルの第九 第2楽章まではとてもよかった!
2024年12月20日、オペラシティコンサートホールで、東京フィルハーモニー交響楽団のベートーヴェン『第九』特別演奏会を聴いた。指揮はケンショウ・ワタナベ。
ケンショウ・ワタナベは日本生まれで子どものころにアメリカに移り住んだらしい。ネゼ=セガンのアシスタントを務め、今後、世界的な活躍が期待されているという。ネゼ=セガンは私のひいきの指揮者の一人なので、ぜひ聴いてみたいと思ったのだった。
第九の前に演奏された「フィデリオ」序曲は、冒頭のフレーズの勢いにぐっと来た。その後も、エネルギッシュで初々しい。とてもよい演奏。ただ、東フィルの音にまとまりがなく、ちょっと不安を覚えた。
第九については、第2楽章までは素晴らしいと思った。正統派だと思う。無理なことは少しもしない。自然な流れの中に、時々ハッとするような強い音、あるいは美しい音が響く。音のまとまりもよく、内声部も美しい。溌剌として初々しく鮮烈。それ以上の踏み込んだ表現がなされないという不満はないでもないが、これだけオーケストラをコントロールしているのはたいしたものだと思った。先日聴いたアンジェリコと読響の演奏より私はずっと惹かれた。
第3楽章も、美しい音の重なりで静寂の中に天国的な高まりを聴かせてくれたが、肝心のホルンのソロの部分で音が出ずに崩壊! なんてことだ! その後、ちょっとぎくしゃくした。第4楽章に入って持ち直したかに見えた。レチタティーヴォの部分は知的に、繊細に進めてなかなか良かった。が、歌が入ってから、またまたおかしくなってしまった。
バリトンの上江隼人はオペラの悪役のような歌い方。まるで「トスカ」のスカルピアではないか。ちょっと違和感を抱いた。テノールの清水徹太郎も、オペラ的な歌いまわし。指揮者の指示だろうか。ソプラノの吉田珠代、アルトの花房英里子ともに実力を発揮しているようには聞こえなかった。いや、一人一人は悪くないと思うのだが、4人のバランス、合唱(三澤洋史の合唱指揮による新国立劇場合唱団)とのバランスがよくなく、バタバタになってしまった。この指揮者、まだ合唱の扱いに慣れていないのだろうか。最後の方は苦し紛れにめいめいが勝手に歌っているように聞こえた。
演奏終了後、最初に指揮者はホルンに立たせようとしたようだったが、ホルンのメンバーは立たなかった。失敗はしたが、指揮者は努力を称えて立たせようとし、ホルン奏者たちは遠慮したのか、それとももっと険悪な気持ちでのやりとりだったのか気になった。私は後ろの方の席だったので表情はわからなかった。
ところで、第九の演奏会はふだんの演奏会と客層がかなり異なる。先日の読響の第九では、第1楽章の終わりで拍手が起こり、さすがにもう大丈夫だろうと思ったら、第2楽章の終わりにもまた同じくらいの大きさの拍手が聞こえた。今日は、私の前の席に高校生くらいの男の子が座っており、第1楽章が始まったころから大きく体を動かして居眠りを始めた。まあ、それはいいとして、横にいるお母様らしい人がそれを気にしてたびたびお子さんの方に顔を向けて注意をしたり、起こそうとしたり。私としてはそちらの方が気になった。
また隣の席の高齢(と言っても、私よりも年下かもしれない)の男性は指揮者が登場してもまだスマホに何やら書き込んでいたので、私がやめるように注意しなければならなかった。その後、演奏中も膝に置いたダウンジャケット(かな?)をいじっており、それがかさかさ音のする生地なので、私としては大いに気になった。こんなことまでマナーを呼びかけるのはなかなか難しいなあ・・と思ったのだった。
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