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小中陽太郎先生の葬儀、そして青木尚佳リサイタル

 2024年12月3日、小中陽太郎先生がお亡くなりになって、本日12月6日、中目黒教会で葬儀が執り行われた。

「ベ平連」で活躍する小中先生のご様子を高校生の時にテレビで目にしていた。ところが、それから40年ほど後、私が多摩大学で仕事をするようになってから、小中先生と知り合う機会を得た。私に対しても、気さくに話してくださった。しかも、先生は、東大仏文出身なので、先生の同級生に、一応はフランス文学を学んでいた私にとっての先生筋に当たる方が多く、そのうえ奥様はかつて音楽を専門になさっていた方だった。ご夫婦で私のゼミの主催するコンサートにおいでくださったこともある。何かイベントがあると、小中先生から呼び出しがかかり、何気なくいくと、突然、みんなの前で話をするように指名されたりして、途方に暮れたこともあった。楽しい食事を何度もご一緒した。

 話術の達人であり、コミュニケーションの達人だった。それも、単に「感じがいい」というのではなく、深い教養に基づいて多様な価値観を理解なさっているので、即座に深いところまで理解したうえでのコミュニケーションだった。しなやかで自由な精神。先生は、「翔べよ、源内」という、平賀源内を主人公にした小説を書かれているが、その自由で奔放でしなやかな源内の姿はそのまま小中先生のお姿だった。小中先生は、この欲と悪意にまみれた社会をしなやかに翔んで見せてくれた。

 フェイスブックでたびたびやり取りをしていた(タイプミスや誤変換が多く、しばしば判読に苦労した!)が、数年前、突然、連絡が途絶えた。体調がよくないという話を聞いて、心配していた。ネットニュース訃報に接したのだった。またも尊敬する人が亡くなった!

 初めてのキリスト教の教会で葬儀。交際の広い方なので、大勢の方がこられていた。いつもと勝手が違うので戸惑ったが、小中先生らしい、親しみにあふれた葬儀だった。祈祷をなさった牧師さんも小中先生と家族ぐるみで親しくなさっておられたとのこと。音大生だというお孫さんがフォーレの「レクイエム」の「ピエ・イエズ」を歌われた。合掌。

 その後、一休みして、紀尾井ホールで紀尾井レジデント・シリーズ III、青木尚佳のヴァイオリン・リサイタル“Fantasy”を聴いた。

 シェーンベルクの幻想曲 op.47、シューベルトの幻想曲ハ長調 D934、シューマン:幻想曲ハ長調 op.131(クライスラー編)、サン=サーンスの幻想曲 op.124、サラサーテのカルメン幻想曲 。要するに、Sで始まる作曲家の「幻想曲」を集めたリサイタルだ。ピアノ伴奏はボリス・クズネツォフ、ハープは早川りさこ。

 ファンタジー。まさに想像力を発揮して気ままに作り出される音楽。小中先生の葬儀の後にふさわしい。ただ、どれもとてつもなく技術的に難しそう!

 ヒラリー・ハーン(近々、日本で公演する予定だったが、体調不良で来日しないらしい。残念!)を思わせるような怜悧な弓さばき。音程の良いシャープな音。縦横無尽に弾き、そこからスケールの大きなクリアな世界が広がっていく。シェーンベルクの無機的ながらも自由で広がりのある世界に驚嘆、シューマンの夢幻的な躍動感にも酔った。サラサーテのカルメン幻想曲の最後の超絶技巧もすさまじかった。どこまでもクリアでゆがみがない。きりりと引き締まった無限の宇宙を見ているような気になった。


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