金川・佐藤・久末の「偉大な芸術家の思い出に」に感動!
2025年2月13日、紀尾井ホールで、金川真弓(ヴァイオリン)・佐藤晴真(チェロ)・久末航(ピアノ)によるトリオを聴いた。曲目は前半に、ジョーン・タワーの「Big Sky」とベートーヴェンのピアノ、ヴァイオリン、チェロのための三重協奏曲(ライネッケ編曲によるピアノ三重奏版)、後半に、チャイコフスキーのピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の思い出に」。
ソリストとしても活躍している三人のトリオ。しかも、この三人、ドイツで演奏し、その後、日本各地ですでに演奏しているとのこと。期待しないわけにはいかない。
現代作曲家タワーの曲は、現代音楽に疎い私でも楽しめるものだった。まさに神秘。金川のシャープで美しい音、佐藤の包容力のある深い音、久末の知的に構築していく音が絡まって不思議な世界を作り上げていく。私はあまり「空」は連想しなかったが、淡い色の万華鏡のようなものを想像した。
ベートーヴェン三重協奏曲のピアノ三重奏版は、オリジナルと楽器の割り当てが異なるので、しばしば戸惑った。元の曲をとてもよく知っているのなら、それはそれで楽しめるのだろうが、私は中途半端にしかこの曲を知らないので、乗り物酔いのような気分になった。もちろん、とてもよい演奏だったが、正統派好きの私は、「やっぱりオリジナルのほうがいいなあ」と思ったのだった。
後半、佐藤さんがマイクを持って、三人ともソリストとして先ごろ亡くなった秋山和慶さんとともに演奏していたこと、そしてたまたま準備していたこの曲の演奏を秋山さんに捧げると話して、演奏を始めた。この曲は、チャイコフスキーが先輩であったニコライ・ルービンシュタインの追悼として作曲したものなので、秋山さんの追悼にふさわしい。
これは素晴らしい演奏だった。シャープでスマート、しかし、最近ありがちなシャープすぎる演奏ではなく、包容力もあり深みもある。第2楽章の変奏曲はニュアンスの変化、元のメロディと変奏の重なりなど、実に見事。それぞれの楽器の特性、それだけでなくそれぞれの奏者の個性を見事に生かしている。金川さんの凛とした音色、佐藤さんの深い音色がしっかりと発揮され、それをピアノが支える。三人の息はぴったり合って、まるで常設の三重奏団のよう。変奏曲が徐々に盛り上がり、親しい人を失った慟哭になり、あきらめにも似た追悼になる。感動した。
アンコールは、キーゼヴェッターの「タンゴ・パテティック」。「悲愴」やら「エフゲニ・オネーギン」やらのメロディが引用される楽しい曲。
追悼と言えば、昨日の新聞でエディット・マティスが亡くなったことを知った。実演は聴いたことがなかったと思うが、レコード、CDはかなり聴いてきた。そして、今日は下條アトムさんが亡くなったことを知った。下條さんが、町田市民ホールで「ダモイ」(辺見淳のノンフィクション「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」を原作とする演劇。これはのちに二宮和也主演で「ラーゲリより愛を込めて」というタイトルで映画化された)で主人公の山本幡男を演じた時、山本幡男の息子さんである山本顕一先生とご一緒して、終演後の打ち上げに参加させていただいた。楽しく飲むことができた。良い思い出だ。素晴らしい俳優だった。合掌!
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