インバル&都響 死と恐怖の音楽!
2025年2月10日、東京文化会館で東京都交響楽団の定期演奏会を聴いた。指揮はエリアフ・インバル、曲目は前半にラフマニノフの交響詩「死の島」、後半に、グリゴリー・シュカルパ(バス)とエストニア国立男声合唱団が加わって、ショスタコーヴィチの交響曲第13番「バービイ・ヤール」。死と恐怖をテーマにしたコンサートといっていいだろう。とてもいい演奏だった。
「死の島」の実演を初めて聴いた。暗くて悲劇的で恐怖に満ちていながら、いかにもラフマニノフらしくロマンティックで官能的。まさにタナトスとエロスが入り混じっている。インバルの指揮もさることながら、都響の響きが見事。しなやかに音が重なり合い、流動して、グレゴリオ聖歌の「怒りの日」のメロディが浮かんでくる。この暗く恐ろしい音楽はなかなか捨てがたい。
「バービイ・ヤール」は堂々たる名演だった。バスの独唱によりバービイ・ヤールで虐殺されたユダヤ人の心を叫び、ロシアへの愛、そしてロシアをゆがめる人々への怒りをたたきつける。ショスタコーヴィチらしい怒りと皮肉を交えた音楽。字幕がつくのがありがたい。第二楽章「ユーモア」はとてもおもしろかった。まさにショスタコーヴィチの面目躍如といったところ。毒のある皮肉を叫ぶ。ショカルパはまだ若い歌手だが、堂々たる歌。合唱も素晴らしい。都響は澄んだ音でショスタコーヴィチの屈折した心を爆発させて見事。これほどの怒りの表現を、少しも手加減しないままに知的にぶつけるインバルの手腕にも驚く。
ユダヤ人虐殺への怒りがテーマだが、もちろん、聴く者としては、ウクライナを攻撃する現在のロシアへの怒りを重ね合わせてしまう。
実はラフマニノフもショスタコーヴィチもそれほど好きな作曲家ではない。たまに聴きたくなるが、それほど親しんでいるわけではない。だから、演奏がどうこう言う資格は私にはない。ショスタコーヴィチに至っては、聴くたびにどう理解してよいのか途方に暮れる。だが、そうであったとしても、今日もまた大きな衝撃を受け、またショスタコーヴィチを聴きたいという気持ちになったのだった。
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