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東京春音楽祭「パルジファル」 世界最高レベルの演奏に興奮!

 2025327日、東京文化会館で東京春音楽祭、ワーグナーシリーズ、「パルジファル」(演奏会形式)を聴いた。指揮はマレク・ヤノフスキ。管弦楽はNHK交響楽団

 これは、間違いなく世界最高レベルの演奏だと思った。

 まず、ヤノフスキの指揮に圧倒された。かなり快速。もしかしたら、リハーサルよりももっと速かったのかもしれない。終了予定時間が20時になっていたのに、1945分には終わった。しかし、だからと言って味が薄いわけではなく、じっくりと音楽が成り立っていく。きびきびしてドラマティック。すべてがぴたりと決まって、曖昧なところがない。一つ一つの音がしっかりと鳴り、それが重なり合い、ワーグナー特有のうねりを作り出す。厳粛さもあり官能美もある。私はワーグナーの音楽のうねりに身を任せるばかりだった。N響もとりわけ弦楽器と木管楽器の美しさにほれぼれした。しっかりとワーグナーの音を出して見事。

 歌手陣は申し分ない。まさに世界最高の布陣! グルネマンツのタレク・ナズミは圧倒的な声。この役にふさわしい柔らかく包容力のある声。アムフォルタスのクリスティアン・ゲルハーヘルは、いかにもこの名歌手らしく知的な歌唱。まるでリートを歌うようにアムフォルタスの心の傷を歌う。それがひしひしと聴く者に伝わる。クンドリのターニャ・アリアーネ・バウムガルトナーも圧倒的な声でこの謎の女を歌って説得力がある。パルジファルのステュアート・スケルトンも高貴な声で、これまたけた違いの声の威力を聴かせてくれる。そしてもうひとり、クリングゾルのシム・インスン(アジア系の歌手)もとてつもない声で悪役を歌う。

 この外国人勢5人の声の威力たるや凄まじい。分厚いオーケストラをものともせず、ホール中にビンビンと響く。

 脇を占める日本人歌手も大健闘。すべての歌手が最高度に歌ったと思う。東京オペラシンガーズの合唱もとても威力があった。ただ、そうはいっても、やはり世界最高レベルの歌手たちとの距離は大きいなあ・・・と改めて思った。

 私は少し風邪気味で、少々体調を心配しながら聴いたのだったが、第2幕と第3幕で何度も体全体に悪寒が走り、ぞくぞくしてきた。「これはまずい。風邪が悪化しているようだ」と思ったのだったが、どうやら感動の悪寒だったらしい。体が音楽に反応して震えていた。しばらくしてからは、ワーグナーが私の体の中の病原菌を追い出してくれているような気がした。

 これほど素晴らしいワーグナー演奏を聴く機会はほとんどない。堪能した。興奮した。感動した。

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コメント

勝手なメール、不躾で申し訳ありません。ミモザと藤の満開の時期にアッピア街道を数日ですが歩いてきました。一言では、素晴らしいと感じ、再度の訪問を計画中です。
 ただ、この度の私の大好きなパルジファルに関しては、もう、半世紀以前とは日本人の耳の肥方も違うと察しますので春祭の演奏会は曖昧な賞賛では無く、ズバリ評価の方が今後に繋がると思います。私見ではパルジファルは唯一、モーツァルトのオペラに匹敵する底無しの魅力を秘めていますので、オケも歌手も吟味された演奏での観劇をお勧め致します。

投稿: | 2025年3月30日 (日) 12時27分

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