ゲルシュタイン&カルテット・アマービレのブラームス五重奏曲に感嘆!
2025年4月5日、東京文化会館小ホールで東京春音楽祭、キリル・ゲルシュタイン(ピアノ)の世界 II ー 室内楽を聴いた。出演は、キリル・ゲルシュタイン(ピアノ)とカルテット・アマービレ(ヴァイオリン:篠原悠那、北田千尋、ヴィオラ:中恵菜、チェロ:笹沼樹)。曲目はブラームスの室内楽で、前半にピアノ四重奏曲第2番、後半にピアノ五重奏曲。とてもよい演奏だった。
ピアノ曲をあまり聴かない私は、キリル・ゲルシュタインというピアニストを知らなかった。なるほど一つ一つの音に力のあるピアニストだと思った。しかも、ロマンティックな歌があり、とてつもないテクニックがある。カルテット・アマービレもとてもよかった。第一ヴァイオリンの篠原悠那は芯の強い鮮烈な音、第二ヴァイオリンの北田千尋は少し伸びやかな音。ヴィオラの中恵菜はしなやかで深みのある音、チェロの笹沼樹はしっかりとロマンティックにまとめる音。それぞれの音が微妙に絡み合う。
ピアノ四重奏曲は明るくて祝祭的な雰囲気をうまく出して、とてもよかった。第2楽章はロマンティックな思いにあふれる。ただ、曲自体にそのような傾向があるが、やや晦渋と感じるのは私だけではあるまい。「いったい、今、音楽はどこを進んでるんだ?」という疑問を抱かざるを得なかった。とてもよい演奏なのだが、少なくとも私は時々音楽を見失った。私の修行不足のせいかもしれないが、もう少し構築的に処理してくれれば、私も納得できたのではないかとも思った。
ピアノ五重奏曲は圧倒的に素晴らしかった。ピアノがスケールの大きな世界を作り出し、弦楽器が緻密で親密な世界を作り上げていく。弦楽器が息のぴたりと合った同質の音で音楽が論理的に進み、くんずほぐれつと高揚していく。すべての楽章が素晴らしかったが、第3楽章以降の高揚は言葉をなくす凄さだった。まったくスキがなくぐんぐんと音楽が進み、すべての音が生きている。情熱を持ち、意志を持った生命体のように音楽が進んでいく。第4楽章後半は高揚に高揚を重ね、抑制した情熱の深い爆発へと進んでいく。しかも、そこに人間の嘆きがあり、人生の重みがあり、ロマンティックな感嘆がある。これぞブラームスの室内楽曲の醍醐味!
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