藤原歌劇団「ロメオとジュリエット」 健闘しているが、グノーらしくなかった
2025年4月26日、昭和音楽大学 テアトロ・ジーリオ・ショウワで藤原歌劇団公演 グノー作曲「ロメオとジュリエット」をみた。指揮は園田隆一郎、演出は松本重孝。実際の舞台というよりは、オーケストラが舞台上にいてその手前で歌手陣が演技をしながら歌う、いわば「セミ・ステージ」に近い形。背景に映像が映されるだけで、舞台装置はない。
全体的には、堅実な仕上がりだったといえるだろう。園田の指揮は推進力のある音楽を作り出し、オーケストラの掌握もしっかりしている。とても好感を持てる音楽づくりなのだが、私としてはもう少し叙情性を深めてもいいのではないかと思った。言い換えれば、フランス的な雰囲気が欠けている気がした。
私がかつてフランス文学を学んでいたためについ気になってしまうせいもあるのかもしれないが、フランス語のオペラについては、どうも発音が気になる。今日も、歌手陣に対しては、一様にフランス語の発音に少し問題を感じた。どうもすべての歌手のフランス語がフランス語に聞こえない。鼻母音もきれいに聞こえてこないし、フランス語特有の柔らかい子音も母音も聞こえてこない。そうなると、直情的ではなく、しなやかで叙情的な中にドラマが立ち上がってくるグノーの雰囲気が出てこない。なんだかイタリアオペラを聴いている気分になってくる。
ロメオの渡辺康とジュリエットの光岡暁恵もその傾向が強かった。二人ともだんだんと声に張りが出てきてなかなかの迫力だった。メルキューシオの井出壮志朗、ティバルトの工藤翔陽、ステファノの山川真奈、ジェルドリュードの高橋未来子、ローランの伊藤貴之も熱演。合唱は藤原歌劇団合唱部、管弦楽はテアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラも健闘。ちょっと音程がふらついたり、声が不安定になることはあるが、全体的にはしっかりと声を出し、その役を演じている。
ただ、逆にいえば、健闘しているように聞こえてしまうのが問題なのだと思う。いかにも頑張っている雰囲気なのだが、そうなると、グノーでなくなり、フランス・オペラでなくなる。細かなニュアンスがなくなり、気品が薄れる。その意味では少し不満に思えた。
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