辻本玲 無伴奏チェロ組曲2・3・6番
2025年4月17日、東京国立博物館で東京春音楽祭「東博でバッハ」を聴いた。今日は、辻本玲によるバッハの無伴奏チェロ組曲全曲演奏の2日目。前半に第2番と第3番、後半に第6番。昨日、1・4・5番を聴いたが印象は変わらない。
第2番はふくよかで深い哀愁がじわじわと伝わるような演奏だと思った。自由でのびやかだが、自由すぎない。安定し、おおらかでしみじみしている。何かを表現しようとしているのではなく、おのずと音楽が語るに任せている感じがする。
第3番はスケールが大きく、まさにのびやか。素晴らしいと思った。無理をしていないのに音楽が大きくなる。テクニック的にも見事だが、それを誇張して聴かせることなく、音が重なって大きな世界を作りあげていく。もともと私の好きな曲であるせいかもしれないが、大いに感動した。
第6番は、あくまでも舞曲であることを強調しているように思えた。精神の深みと人間精神の自由を歌い上げるような無伴奏チェロ組曲全曲なのだが、とりわけ第6番は舞曲的な要素が強いと思う。辻本はそれを的確にとらえて、深刻になりすぎずに、踊りの曲として、何よりも楽しむ曲として、そして人々が集ってわいわいがやがやとにぎわう曲として演奏する。なるほど。
全曲を聴いて、この演奏家はバッハを生真面目で宗教的な人物としてではなく、あくまでも自由で生き生きとした、そして人々とともに生きる喜びや悲しみを分かち合い、楽しみあおうとする人として描いているのを感じた。それにとても説得力があった。
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