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東京春音楽祭「ミサ・ソレムニス」 超快速の疾風怒濤の「ミサ・ソレムニス」

 2025年4月4日、東京文化会館で東京春音楽祭「ミサ・ソレムニス」を聴いた。指揮はマレク・ヤノフスキ。管弦楽はNHK交響楽団。

 ヤノフスキらしいというべきか、超快速の「ミサ・ソレムニス」だった。「グローリア」の後半で、オーケストラや合唱がついていくのにやっとというほどの猛烈な速さになったので、もしかしてつい勢いに乗って、ヤノフスキの意図以上に速くなりすぎたのでは?と思ったが、ヤノフスキは涼しい顔。どうも予定通りらしい。確かに、そのあともしばしば猛烈な速さになった。

 聴き慣れない速さなので驚いたが、それはそれで異常なほどの活気にあふれ、ドラマティックで、まさに疾風怒濤。しかし、もちろんヤノフスキの正確なタクトのために、音楽は乱れない。そう、確かに、この曲を、これまでの多くの指揮者のように、ゆっくりと厳かに演奏すると、少々だれてしまう。が、このような演奏だと、だれる間もなく、聴衆は音楽のただなかに巻き込まれる。なるほど、これがヤノフスキの考える「ミサ・ソレムニス」なのだろう。おっとりと構えるのではなく、挑み、自ら信仰を獲得するためにアグレッシブに働きかけるベートーヴェンらしい宗教曲。

 歌手陣はまさに最高。特に、ソプラノのアドリアナ・ゴンサレスの清らかでエネルギーのある美声に酔った。この人の名前は初めて知ったような気がする。素晴らしかった。テノールのステュアート・スケルトンも音程の良い美声。ワーグナー歌いだが、凛とした声なので宗教曲にもあっている。もちろん、メゾ・ソプラノのターニャ・アリアーネ・バウムガルトナーとバスのタレク・ナズミも、「パルジファル」を歌った時と同じようにしっかりとした声が見事だったが、今回に限っては、ゴンサレスとスケルトンの二人の声がビンビンと響いていた。合唱は東京オペラシンガーズ、合唱指揮はエベルハルト・フリードリヒと西口彰浩。この猛烈な速さのタクトについていく合唱もさすがというしかない。

 新鮮な「ミサ・ソレムニス」を聴くことができた。満足!

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