東京春音楽祭 演奏会形式「こうもり」 興奮の演奏!
2025年4月18日、東京文化会館で東京春音楽祭、演奏会形式によるヨハン・シュトラウス2世のオペレッタ「こうもり」を聴いた。世界レベルの素晴らしい演奏! 興奮した。
演奏会形式ではあるが、テーブルとソファがいくつか置かれ、演技を加え、必要不可欠な衣装(ガウン、看守の制服など)や小物(時計など)を使って歌われる。「こうもり」はこれだけで十分に楽しい舞台が出来上がる。
アイゼンシュタインがアドリアン・エレート、ファルケ博士がマルクス・アイヒェ。すでに日本でもおなじみのこの二人が出演するということだけで、すでにこの演奏が世界レベルであることがわかる。エレートは実際、芸達者でユーモラスで、見事な声で表現力豊かに歌う。アイヒェもエレートに劣らず芸達者。笑いを醸し出す。二人の安定感はすさまじい。
アデーレのソフィア・フォミナも見事。調べてみたら、私はコヴェントガーデンの「ギヨーム・テル」の映像でこの人の歌うジェミに感心した覚えがある。演技もコケティッシュでとてもチャーミング。アルフレートのドヴレト・ヌルゲルディエフもこの役にふさわしい美声。オルロフスキー公爵のアンジェラ・ブラウアーは私も映像でしばしばみては、いずれもとても感心してきた。まさに名歌手。この不思議な役を見事に歌う。
そして、何よりも圧倒されたのは、ロザリンデのアニタ・ハルティヒ。突然の代役だったので、それほど期待しないでいたのだが、驚くべき凄さだった。ワーグナーでも歌えるような強い声で、音程がよく、しかも声量がある。声の表現力も豊かで、いくつもの表現を持っている。チャルダッシュはまさに圧巻。ドラマティックな要素からコミカルな要素まで心行くまで聴かせてくれた。
いやはや、出演する歌手、全員が素晴らしい!
脇を日本人歌手が固めたが、フランクの山下浩司は外国人に一歩も引かない歌と演技。ブリント博士の升島唯博、イーダの秋本悠希も見事な演技。ドイツ語も、少なくとも私にはネイティブの発音に聞こえる。フロッシュの志村文彦も専門の役者顔負けのユーモラスな演技。時に日本語を交えて、観客の笑いを誘っていた。東京オペラシンガーズの合唱もよかった。
しかし、この演奏の最大の功績はジョナサン・ノット指揮の東京交響楽団にあるだろう。生き生きとしてわくわく感にあふれ、スピーディで躍動的。第2幕の夜会の部分で、スーペイン風、スコットランド風、ボヘミア風、ハンガリー風の舞曲が演奏されたが、それも本当にワクワクする演奏だった。
第二幕、第三幕と、私はわくわくし、興奮し、幸せな気持ちになった。ワーグナーもいいが、ヨハン・シュトラウスもいい! 本当に楽しい。
昔、カラヤンの二つの録音でこのオペレッタになじんでいた私は、初めてカルロス・クライバーの演奏を聴いて、その生きのよさとシャープでさっそうとした音楽に驚嘆したが、もし、クライバーの演奏を知らなかったら、今回、その時と同じほどの衝撃を受けただろう。表現そのものはかなり異なると思うが、クライバーに劣らないほど躍動と刺激に満ちている。いやあ、ノットという指揮者、リヒャルト・シュトラウスもあれほど素晴らしく演奏、ヨハンもこれほど。これは改めてとんでもない指揮者だと思った。
私の東京春音楽祭2025年はこれにて終了。今年もまた素晴らしい演奏がたくさんあった!
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