映画「侍タイムスリッパ―」「PERFECT DAYS」
Prime videoで映画を2本みた。簡単に感想を記す。
「侍タイムスリッパ―」 2024年 安田淳一監督
日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作品。話題になった作品。幕末、会津の藩士・高坂新左衛門(山口馬木也)は、長州藩士を殺害しようと闘っているとき、雷に打たれてタイムスリップ。現代の京都の太秦撮影所に移動してしまう。ほかにできることもなく、時代劇の斬られ役として働くうち、時代劇の大御所・風見恭一郎(冨家ノリマサ)の推薦で話題の映画の準主役に抜擢される。ところが、その風見は、実は30年前にタイムスリップした戦いの相手だった。二人は、侍魂を現代に見せようとして、時代劇つくりに励む。高坂は会津藩の悲劇を知って同胞に報いたいと考える。
簡単にまとめるとそんな話。ありがちな設定、まさにベタな映画。だが、これが実におもしろい。純朴で生真面目な高坂の気持ちが手に取るようにわかるように作られている。現代にタイムスリップした戸惑い、不器用な恋、風見への揺れ動く心が面白おかしく描かれる。そして、映画と現実が重なり合う、というこれまたベタな展開もうまく応用される。
私は藤田まことのファンだったので、彼の主演する「剣客商売」は熱心に見ていた。息子役を当初演じていたのは渡部篤郎だったが、途中から山口馬木也に代わった。まったく知らない俳優さんだった。渡部に比べて華がなく地味な感じがしたが、それでも味のある役者なのでひそかに応援していた。また、冨家ノリマサは美男だけで味のない役者だと思って、もったいないと思いながら見ていた。ところが、この二人の凄さ! 年を経るにしたがって、味が増し、本当にいい役者になっていた。いや、二人だけでなく、すべての役者がいい味を出している。
「PERFECT DAYS」 2023年 ヴィム・ヴェンダース監督
ヴェンダース監督が日本を舞台に、役所広司を主人公にして撮った映画。小津安二郎の映画に傾倒するヴァンダースらしい、まさに小津を思わせる映画。
毎日、決まった時刻に起きて決まった行動をとって東京のトイレを清掃する作業員平山(役所広司)の毎日を追いかける。姪が登場して平山の過去の状況がほのめかされたり、仕事仲間の恋愛事情、行きつけのスナックのママの苦悩などが描かれたりするが、さりげなく、日常の一コマとして扱われる。そして、平山は日々の生活の喜びと悲しみと苦悩を抱えながら、完璧に仕事をこなし、トイレを見事なまでに清潔にし続ける。
それだけの映画なのだが、映像美、ゆっくりと流れる生活感、登場する人々(仕事仲間の柄本時生、ホームレスの田中泯、居酒屋店主の甲本雅裕、スナックママの元夫の三浦友和)の存在感が素晴らしい。風景がそこにあり、そこに人が生きている、ただそれを描くだけで素晴らしい映画になるのだと、つくづく思う。
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コメント
私も「Perfect days」が劇場公開されたときに観ました。それ以来、駅のトイレや公園のトイレに入ると、便器をピカピカに磨いてくれた人のことを思うようになりました。良い映画でしたね。今でも余韻が残っています。
投稿: Eno | 2025年4月23日 (水) 11時41分
Eno様
コメントありがとうございます。Eno様のブログの「Perfect days」の感想を読ませていただきました。以前にも読ませていただいた覚えがあります。本当におっしゃる通りだと思います。自分の仕事を完璧にこなす人々が支えているからこそ、このように社会はコミュニケーションを取れて動いているのだ、ということをしみじみと感じさせられる映画でした。
投稿: 樋口裕一 | 2025年4月24日 (木) 07時14分