ウルバンスキ&都響のショスタコーヴィチ こんなすごいショスタコ5番を聴いたことがない!
2025年5月16日、サントリーホールで東京都交響楽団定期演奏を聴いた。指揮はクシシュトフ・ウルバンスキ。曲目は、前半にペンデレツキの「広島の犠牲者に捧げる哀歌」と、アンナ・ツィブレヴァのピアノ独奏が加わってのショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番、後半にショスタコーヴィチの交響曲第5番。圧倒的な演奏だった!
ペンデレツキの曲は、まるで弦楽器による警戒警報のような音の連続。しかし、音を模倣しているというよりも、人類の滅亡の警報に聞こえる。ものすごい緊迫感!
ピアノ協奏曲第2番は打って変わって、ショスタコーヴィチが息子マキシムを意識して作曲したといわれる曲。ショスタコーヴィチの曲にはときどきロッシーニの「ウィリアム・テル」序曲を模した音型が現れるが、この曲でも何度か序曲の中の行進曲に似たメロディが現れる。超絶技巧でにぎやかで快活で子どもらしい無邪気さにあふれた曲。まさに平和を享受した音楽とでもいうべきだろう。
アンナ・ツィブレヴァのピアノが素晴らしい。このピアニスト、舞台に登場したときから、若々しくて清楚な姿のわりに動きがゆっくりで、優雅さにあふれていたが。ピアノはまさに音の粒立ちが最高に美しく、自然で躍動的。ウルバンスキの指揮する都響も切れがよく、しかもしなやかでのびのびとして見事。聴衆も音楽に巻き込まれて幸せな気持ちになる。
ピアノのアンコールはショスタコーヴィチの24の前奏曲op34より第10番嬰ハ短調とのこと。こちらはもっと清楚で静か。音が本当にひそかに輝いている。
後半の交響曲第5番は前半にもまして素晴らしかった。
ウルバンスキの指揮は、とてもわかりやすく明快。いや、それ以上に、本人がどのくらい意識しているかわからないが、指揮の動きが本当に美しい。長い手足の動きに惚れおぼれする。出てくる音楽も切れがよく、構築性が明確。きわめて明晰で論理的なのだが、音楽が生きているので頭でっかちに感じない。一つ一つの音が生きている。生きた音を積み重ねていく。
第1楽章のドラマティックな展開も素晴らしかったし、第2楽章の諧謔と静けさにあふれた研ぎ澄まされたメロディも見事。そして、私は第3楽章の組み立てにとりわけ驚嘆した。この上なく繊細で緊張感にあふれ、徐々に徐々に音楽が盛り上がっていく。平和な日常を戦争が壊していくのがひしひしと感じられる。第4楽章も人民の勝利に向けての盛り上がりも素晴らしい。第1楽章から緻密に組み立てられ、一部の隙もなく展開され、最後に人民の勝利への思いが爆発する。都響の澄んだ音が大音響で広がった。都響も素晴らしい!
高校生の時(1960年代!)にマキシム・ショスタコーヴィチ指揮のソヴィエト国立交響楽団の演奏を大分市の文化会館で聴いて以来、かなりの数のコンサートでこの曲を聴いてきたと思うが、こんな第3楽章、これまで聴いたことがない!と思った。いや、これほど完成度の高いこの曲をこれまで聴いたことがないと思った。感動した。ウルバンスキ、おそるべし!
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