シューマン・クヮルテットの「大フーガ」と第13番に感動
2025年6月17日、サントリーホール ブルーローズでシューマン・クヮルテットのベートーヴェン弦楽四重奏全曲演奏の5日目を聴いた。曲目は前半にベートーヴェンの弦楽四重奏曲第5番と「大フーガ」、後半に第13番。
第5番は、意外と「ふつう」の演奏だった。初日に聞いたのとかなり印象が異なるので戸惑った。おそらく、この後の「大フーガ」、そして、後半の第13番との対比を明確にしようという意図なのかもしれない。大きな起伏はなく、初日に感じたようなドラマじみた仕掛けはない。アンサンブルは見事、それぞれの楽器の音質も合っている。ただ、第一ヴァイオリンを中心に心を合わせて一つの起伏の大きなドラマを作っていくという雰囲気はない。悪い演奏ではなかったが、ちょっと物足りなく思った。
つぎの「大フーガ」は打って変わって激しい音にあふれた。直線的な激しい音の重なりによって巨大世界を作っていく。とはいえ、第一ヴァイオリンの鋭くて強い美音、チェロの包容力のある暖かい美音を中心にして、音そのものがとても美しいので、粗削りという感じはしない。緻密で強靭で芯のある音によって世界が構築されていく。感動した。
ただ、私の思い描いている「大フーガ」とは少し異なっているのを感じた。私は、諦めようとして、どんなに言い聞かせても沸き起こってくる生命力、心の奥にある生のエネルギー、従来の形式の中に押し込まれることのない音そのものの力といったものをこの「大フーガ」に感じるのだが、シューマン・クヮルテットはもっと別のものを描きたいようだった。もっと非人称的、もっと非人間的なものかもしれない。とてもよい演奏だと思いながら、少しとらえきれなかった。
第13番はもっと素晴らしいと思った。初日に聴いたときと同じような印象を抱いた。完璧なアンサンブルによって、おそらくは第一ヴァイオリンのリードのもと、起伏に満ちたドラマを作っていく。波乱万丈にして、研ぎ澄まされ、スリリング。しかし、温かみがある。第3楽章スケルツォのきりりと引き締まったエスプリに感嘆! 第5楽章「カヴァティーナ」は、前半部分は私はもう少しニュアンスがほしいと思ったが、後半のヴァイオリンのすすり泣くような音の美しさには魂が震えた。そして、終楽章。「大フーガ」付きではなく、この終楽章のヴァージョンを選んだ理由がよくわかる。なるほど、祈るようなカヴァティーナの後に、明るくて開放的なこの終楽章が置かれると、まさに一つの世界が完結する! この楽章では私は明るいわくわく感に満たされた。
私はこの四重奏団を素晴らしいと思った。これからもっと伸びていく四重奏団だと思う。これからが楽しみだ。
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