東京二期会「イオランタ と くるみ割り人形」 両方の良さをなくしてしまった合体にがっかり!
2025年7月18日、東京文化会館で東京二期会公演「イオランタ と くるみ割り人形」をみた。チャイコフスキーの最後のオペラ「イオランタ」は、「くるみ割り人形」と同時期に作曲された。ともに童話を題材にしているので、似た雰囲気がある。そんなわけで、この2作を合体させて上演しようという試みだ。
試みはおもしろいと思った。が、実際に見てみると、はっきりいって、つまらなかった。両方の良いところが台無しになっていると思った。
どうも、この2作を合体させるのは、演出陣はあれこれと理屈をつけるかもしれないが、どうやら内的要因はないのではないかと思った。要するにこういうことではないのか!
・「イオランタ」はオペラとしては短い。1時間半ほどで終わる。観客は物足りなく思う。
・「イオランタ」は、チャイコフスキーにしては魅力的なメロディがあまり多くない。
・「イオランタ」の台本は、実はかなり無駄が多い。本筋と関係のない出来事が多く描かれていて、整理されていない。
・「イオランタ」は、考えようによっては障害者差別とみなされるようなセリフが散見される。
以上の点を回避するために、演出のロッテ・デ・ベアは、親しみやすいメロディにあふれている「くるみ割り人形」をくっつけようと考えたのだろう。イオランタが空想するような場面に、「くるみ割り人形」の登場人物らしい人たちが登場して、その音楽に合わせて踊る。「くるみ割り人形」の世界観やストーリーがかかわっているわけではない。こうすることで、親しみやすいメロディを増やし、時間を長くし、「イオランタ」のストーリーのエッセンスだけを取り出して、「くるみ割り人形」でつなげようとした。
その結果、つぎはぎだらけで、「イオランタ」の良さもなくなり、「くるみ割り人形」のよさもなくなった。両方がずたずたにカットされてしまった。ストーリーもわけがわからず、イオランタの心情も伝わらない。両方の音楽の良いところもたくさんカットされている。カーテンコールの際、演出陣が登場すると、あちこちからブーイングが上がっていたが、それも当然だろう。
マキシム・パスカル指揮の東京フィルハーモニー交響楽団の演奏はとてもよかった。しなやかでリズム感にあふれた演奏だった。歌手陣については、イオランタの梶田真未、ヴォデモンの伊藤達人、エブン=ハキアの小林啓倫は健闘していたが、それほど感銘を受けなかった。ルネ王の狩野賢一はかなり不調だったのではないか。前半は音程が定まらず、不安定は歌唱だった。ロベルトの大川博も実力を発揮できていないように思えた。
ちゃんとした「イオランタ」を観たかった!
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