ピノック&紀尾井室内管&ドウガンのベートーヴェン第4番に感動
7月4日、紀尾井ホールで、紀尾井ホール室内管弦楽団定期演奏会を聴いた。指揮はトレヴァー・ピノック、曲目は前半にラヴェルの「クープランの墓」と、アレクサンドラ・ドヴガンのピアノ独奏が加わって、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番、後半にメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」。なお、私はWEB版首都圏の「ぴあ」の水先案内を担当しているが、そのなかでまるでドウガンが「クープランの墓」を弾くような記述をしてしまった。ピアノ版が頭にあったのでそう書いて、すぐにオーケストラ版だと思いなおしたのだったが、文章を修正するのを忘れていた。ここでお詫びして訂正する。
その「クープランの墓」はなかなかにフランス的な演奏だった。ラヴェルにふさわしい色彩的で繊細な音の重なりで、しかもそれがみごとに流動する。知的で硬質。日本のオーケストラも立派にフランスの音を出せるようになったのだ!と改めて感心した。
ただ、最高に素晴らしかったかと問われると、ちょっとためらう。私としてはもう少し遊び心というか、しゃかりきにならない余裕というか、そのようなものがほしいのだが、あくまでも直線的な演奏だった。これにはピノックの音楽性と関係があるだろう。やはりかなり鋭角的な演奏だと思う。それはそれで鋭角的なラヴェルも悪くないとは思うものの、私の好きなラヴェルとは少し異なっていた。
ベートーヴェンの協奏曲は文句なしに素晴らしかった。感動した。まずドウガンのピアノが素晴らしい。音の粒立ちが本当に美しい。繊細だが、強い音は強い。2007年生まれというからまだ20歳にもならない少女なのだが、恐るべきことにぴたりと音が決まり、ニュアンス豊かな起伏があり、歌心もある。第1楽章のカデンツァ(ベートーヴェン自身によるカデンツァが二つあるということで、今回は聴き慣れない方の長いヴァージョンだと松本學さんに教えていただいた)あたりからぐんぐんと乗ってきた。第2楽章後半のリリシズムも素晴らしい。第3楽章の躍動も見事。オーケストラもぴしりと決まって、重層的にピアノを支えた。第2楽章のオーケストラとピアノの掛け合いは実に美しかった。
ピアノのアンコールは「テンペスト」の第3楽章。これも一分の隙もない、構築的でかっちりしながらもニュアンスにあふれた力強い演奏。素晴らしかった。
後半の「イタリア」も期待したのだったが、実は私はあまり楽しめなかった。第1楽章は躍動的でわくわくした雰囲気があってよかったのだが、ちょっとバタバタした感じが強すぎる気がした。確かにこの第1楽章は、心はやる気持ちが出てもよい曲なのだが、それにしてもリズムが安定しない。いつまでたってもバタバタしている。それが第2楽章、第3楽章になっても続き、足並みがそろわないというか、リズムがぴたりと決まらない。
アンコールはフォーレの組曲「ドリー」の「子守歌」。しなやかで優美な曲だが、これもじっくりと味わう雰囲気ではなく上滑りする感じがした。
前半がとてもよい演奏だっただけに、後半、停滞した感じがしたのは残念だった。
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