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ロッシーニの歌の饗宴を堪能した!

 2025713日、王子ホールで日本ロッシーニ協会の主催による「輝きの都ナポリ──王政復古の光と影」を聴いた。水谷彰良氏のわかりやすい解説によってナポリにまつわるロッシーニのオペラからの曲が歌われた。出演はメゾ・ソプラノの富岡明子、テノールの糸賀修平、小堀勇介、渡辺康。ピアノ伴奏は藤原藍子。

 曲目は、「オテッロ」「リッチャルドとゾライデ」「湖の女」「「グロリア・ミサ」「エルミオーネ」「ゼルミーラ」からアリアや二重唱、三重唱など。

 うーん、ロッシーニの歌は実に楽しい! ロッシーニをこれほどに歌える日本人歌手が次々出てきている! いやはやまさに声の饗宴! というのが率直な感想だ。

 糸賀修平ののっけからの全力の声にびっくり! 最初は加減をして歌うものだが、初めの声から見事な大声で、しかも音程はよく輝かしい。渡辺康も引けを取らず張りのある強い声。「オテッロ」のロドリーゴのアリアを歌った小堀勇介は、大ジャンプの着地に失敗したものの全体の完成度で圧倒的な高得点を取ったフィギュアスケートの羽生結弦選手を思い出すような演奏だった。高音で少し声が乱れたが、全体の声の輝きは凄まじい。後半では、小堀は調子を上げて、「グロリア・ミサ」の「クイ・トリス」は本当に素晴らしい歌唱だった。会場中にビンビンと躍動する美声が響き渡る! 装飾音もぴたりと決まり、声の輝きがものすごい。これぞロッシーニの醍醐味!!

「湖の女」の三人のテノールの饗宴も圧倒された。このオペラを聴くたびに、日本でこれほどの3人を集めるのは無理だろうと思っていたのだが、いやいやすでに3人いるではないか!と思った。

 メゾ・ソプラノの富岡明子も見事だった。とりわけ、最後の「ゼルミーラ」のアリアには圧倒された。私はこの歌はバルトーリの録音でたびたび聴いてきたが、それに匹敵するとは言わないまでも、それに肉薄する感動を覚えた。アジリータも素晴らしい。音程も完璧で、スケールの大きな躍動感! 日本にこのアリアをこれほど歌える歌手がいたとは!

 ただ無理やりこのコンサートに難癖をつけるとすると、私はこのようなオペラ・アリアのコンサートでしばしば感じる通り、今日も多くの歌手が声を前に出すことを何より重視しているのを感じた。野球でいうと、すべての投球を150キロ以上のストレートにしようとしている。できれば160キロ以上を出そうとしている。だが、私は変化球を加え、緩急や強弱をつけるほうが効果的だと思う。音楽も声を前に出すことばかりを考えるよりは、弱音を活かしてほしい。もちろん、このような場では、歌手たちはどうしても声の威力を聴かせたくなるのだろうと思うが、弱音を使うほうが奥行きが出ると思うのだ。

 とはいえ、ロッシーニの歌を堪能できた。繰り返すが、ロッシーニの歌は実に楽しい!

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コメント

 遅いコメントですみません。読んで気になっていたのですが後でコメントしようと思ってそのままになっていて、今になってやっぱりコメントしたいなと思ったのです。

 気になったところは「弱音を活かしてほしい。」というところで、昔のことを思い出してしまいまして。
 実は私、まだ当時レコードでほとんどオペラなんて聞いたことがなくて、初めて生の舞台に接したのが最後のNHKイタリア歌劇団でありまして、3公演あったのですがいきなり凄いものをみせてもらったという感じでした。
 その3公演の中でカバリエさんとコソットさんが出演したアドリアーナ・ルクヴルールがあって、2人がさしで歌うところは相手を圧倒しようとするような感じで凄かったのですが、当時何も知らない私がこれも凄いと思ったところは最終幕でのカバリエさんの声でした。
 第4幕はアドリアーナが病気で亡くなってしまうところで、椿姫なんかでもそうですがこれから亡くなっていく役でピアニッシモとはいえ歌い過ぎる傾向があるのですが、カバリエさんの声は本当にピアニッシモで病弱で弱弱しく聞こえるのですが、でもあの広いNHKホールで、私は一階席ではありましたが、しっかり響きわたって聞こえてきたという印象だったのです。
 カバリエさんはカラスさんの後継者みたいに言われたりして強靭な声というような印象があってもちろんそれはそれで素晴らしいのですが、この弱音の凄さも素晴らしくて、私の中で貴重な体験のひとつとなっています。
 奥行きというか、弱音だけでも感動させるのですよね。

投稿: YAMAMAN | 2025年9月28日 (日) 13時17分

YAMAMAN 様
コメント、ありがとうございました。
私は10数年前までイタリアオペラはほとんど聴かず、もっぱらドイツ系のオペラばかり聴いていましたので、NHK招聘のイタリア歌劇団にはまったく触れずにいました。今となってはとても残念に思っています。カバリエ、コッソットを聴かれたんですね! 羨ましい限りです。
私は、ネトレプコのヴィオレッタで同じような経験をしました。名歌手は弱音で感動をもたらす!と強く思ったのでした。

投稿: 樋口裕一 | 2025年9月29日 (月) 08時52分

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