新国立劇場研修生の「スザンナの秘密」と「ルクレツィア」を楽しんだ
2025年7月26日、新国立劇場中劇場で、新国立劇場オペラストゥディオ(オペラ研修所)サマー・リサイタル 2025をみた。上演されたのは、ヴォルフ=フェラーリ作曲のオペラ「スザンナの秘密」とレスピーギのオペラ「ルクレツィア」。いずれもピアノ伴奏版。指 揮は松村優吾、演出は粟國淳、ピアノは岩渕慶子と髙田絢子。ともに、実演、映像ともに。これまで私は観たことがないと思う。
「スザンナの秘密」は、まるでアンジャッシュのコントのような筋立ての短いオペラ。煙草の匂いをさせる妻スザンナの浮気を伯爵は疑ってあれこれ鎌をかけ、その受け答えから浮気を確信する。が、実はタバコを吸っているだけだったという他愛のないオチ。スザンナを歌う渡邊美沙季、伯爵を歌う小野田佳祐ともに、自然な声で歌う。ところどころ声のコントロールが甘いところがあったが、演技も含めてとても好感が持てた。ただ、きれいなメロディがあるとはいえ、煙草賛美のように終わるこのオペラは、現代ではあまり説得力を持たないと思った。
「ルクレツィア」は、「ルクレツィアの凌辱」として知られる物語。私はブリテンのオペラであらすじは知っていたが、これは史実に基づくらしい。王政ローマの最後の王の息子セスト・タルクィーニオが部下の妻であるルクレツィアの貞操を試そうとして凌辱、ルクレツィアは自ら死を選び、王政の幹部たちは、タルクィーニオを憎み、王政をやめることを決意する。
こちらは重めの声の歌手たちがそろって悲劇を歌い上げる。「声」(つまりはナレーターかな?)の後藤真菜美とルクレツィアの有吉琴美がとてもよかった。強い声で憤りをかみしめながら歌う。音程もいいし、声もよく出ている。セスト・タルクィーニオを歌ったのは賛助出演の青山貴。さすがの圧倒的な声と演技だと思った。そのほかの歌手たちも実に見事。ただ、このオペラも、卑劣で悲惨な凌辱を描くだけのような気がして、私にはそこに深みを感じることができなかった。オーケストラで演奏されていれば、もっと深い人間心理が描かれていたのだろうか。オペラとしての限界を感じざるを得なかった。
とはいえ、若い人たちの健闘を目の当たりにして、とても楽しかった。ぐんぐんと日本のオペラのレベルが上がっているのを強く感じる。
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