ヴァルチュハ&読響の「メタモルフォーゼン」と「英雄」に感動!
2025年8月23日、東京オペラシティコンサートホールで読売日本交響楽団土曜マチネーシリーズを聴いた。指揮は読響の首席客員指揮者ユライ・ヴァルチュハ。曲目は前半にリヒャルト・シュトラウスの「メタモルフォーゼン」、後半にベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」。
いうまでもなく、「メタモルフォーゼン」は第2次世界大戦末期に最晩年のシュトラウスが崩壊するドイツの状況を嘆いて作曲した曲であり、ベートーヴェンの「英雄」の第2楽章「葬送行進曲」に基づく響きが全体を覆っている。私のような素人が初めて聴くと、最後になって「葬送」のメロディが出てきて、この曲がこれに基づいていたことが種明かしされて納得した気になる。
素晴らしい演奏だと思った。23台の弦楽器が尽きせぬ悼みの感情、無念の感情、痛恨の感情を描き出す。まるで海辺の波のように、無念が渦巻き、散ってはまた盛り上がっていく。弦楽器の音がからみあい、強く重なり合い、強く連なりあって無念の激しい響きの宇宙を作り上げていく。その絡み合いが痛々しくも美しい。楽器演奏者一人一人に力量もさることながら、それを束ねるヴァルチュハの手腕も見事。初めは、ゆっくりすぎるくらいゆっくりなのだが、徐々に高まり、「葬送」が示されてゆっくりと静まっていく。きっちりと統一感が生まれ、見事に終息する。
あまり大きな拍手はなかったが、私は稀有な名演だと思った。
「英雄」も素晴らしかった。こちらはかなり個性的な演奏と言ってよいだろう。
かなり快速で、アクセントが強く躍動的で、音楽の身振りが大きい。旋律性よりも音の重なりを重視しているようで、ちょっとバタバタした感じがある。とはいえ、読響メンバーの力量が確かなために音は乱れず、構成感もしっかりしているので、音楽の形が崩れない。
私はこの曲の第1楽章は、破綻しかけるのを力づくでまとめているようなところが気になってしまうのだが、この演奏では、最初から力づくでまとめてしまおうというような演奏なので。むしろ不自然さを感じない。だが、この力感は心地よい。まさに英雄的! ぐいぐいと観客を引っ張り、強烈な音の世界に引きずり込む。
第2楽章はコントラバスが大きな陰を作り出して、彫りの深い音楽になっていた。がっしりした構成で、深く沈潜。そして、第3楽章、第4楽章は大きく躍動。とりわけ終楽章はポリフォニックにスケール大きく展開していく。その音の広がりが素晴らしい。交響曲第5番の終楽章に劣らぬ、勝利の高まりのようなものを感じた。感動した。
「メタモルフォーゼン」と「英雄」を同時に聴けてとてもうれしい。私は、シュトラウス好きなので「メタモルフォーゼン」の実演を何度か聴いたことがあるが、今回ほど感動したのは初めてだった。ヴァルチュハは今後を注目すべき指揮者だと思った。
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