カルテット・エーレン旗揚げ公演 素晴らしい弦楽四重奏団!!
2025年9月5日、東京文化会館小ホールでシャイニング・シリーズVol.18 カルテット・エーレン演奏会を聴いた。ドイツを中心に活躍する4人(ヴァイオリンの戸澤采紀、島方瞭、ヴィオラの戸原直、チェロの佐藤晴真)が結成した団体の旗揚げ公演ということになる。曲目は前半にハイドンの弦楽四重奏曲ハ長調Op.74-1 Hob.III:72とヤナーチェクの弦楽四重奏曲第2番「ないしょの手紙」、後半にベートーヴェンの弦楽四重奏曲第9番「ラズモフスキー第3番」。素晴らしい演奏だった!
まさに堂々たる演奏! 奇をてらうことなく、テンポを動かすこともなく、無理やりどこかを強調するのでもなく、ベルチャ弦楽四重奏団やエベーヌ弦楽四重奏団のようにものすごいシャープさを表に出すわけでもない。正統派の演奏でありながら、絶妙のアンサンブルとそれぞれの音の美しさとヴィヴィッドな反応、納得のいく構成感で観客の耳をひきつける。
ハイドンの曲では、前半、いかにもハイドンらしい均整のとれた演奏。研ぎ澄まされ、きびきびしているが、戸澤のヴァイオリンの美しさのために歌心がある。最終楽章のエネルギー溢れる、ちょっとジプシー的な響きも素晴らしかった。
ヤナーチェクの「内緒の手紙」は久しぶりに聴いた。これも正統派の演奏。ドイツ的な演奏と言ってよいかもしれない。民族色は薄れている。その点では、少しヤナーチェクらしさが不足している気がしないでもない。ヤナーチェク特有の「ざわつく音」(と私は密かに呼んでいる)に田舎っぽさはない。都会的に洗練されている。しかし、鋭くも美しい音でざわつくので、聴く者の心の奥底にまっすぐ届く。ヤナーチェクの生命、うずく恋心、魂の奥底から発する性欲(=生命力)が奏でられる。これまた最終楽章は圧巻。
ベートーヴェンの第9番は前半やや抑え気味に聞こえた。第2楽章はちょっともたついた気がしたが、意図的にそのような演奏にしたのだろうか。第3楽章以降はぐんぐんと緊張感が増し、最終楽章は繊細でありながらもスケールの大きな演奏。4台の楽器が見事に絡み合う。これぞ弦楽四重奏の醍醐味だと思う。感動した。
アンコールはラヴェルの弦楽四重奏曲第2楽章。これまたきわめてドイツ的と言ってよいだろう。フランス的な柔らかさやラヴェルらしい諧謔はどこかに行って、ドイツ的に真正面からエッセンスに迫るような演奏。ドビュッシーと違って、確かにラヴェルをこのように演奏してもラヴェルの魅力は伝わる。研ぎ澄まされ、びしりと決まった演奏。これはこれですごい!
カルテット・エーレン! 素晴らしい弦楽四重奏団だと思う。ソリストとしても活躍する奏者たちなので、さて、どのくらい弦楽四重奏団として活動できるのだろう。常設の団体として次々と演奏してくれると、こんなうれしいことはない。
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