« ビシュコフ&チェコ・フィル ビシュコフのチャイコフスキーに深く感動! | トップページ | ガードナー&読響 期待していたのだが・・・ »

加耒徹のブラームスを堪能した!

 20251022日、恵比寿のKIRA HALLで「加耒徹 歌シリーズ ブラームスの歌曲 昼の部」を聴いた。これまで何度か聴かせていただいて常に見事な演奏だった加耒徹が「マゲローネのロマンス」の抜粋を歌うという。これは聴き逃してはならぬと思って出かけた。ピアノ伴奏は松岡あさひ。

 KIRA HALLを初めて訪れた。存在さえ知らなかった。30人程度収容の小さなホールで、「加耒徹 歌シリーズ」は今回が25回目だという。お客さんは年配の女性が大半で常連さんの雰囲気。いやいや、私の知らないところでこんな素晴らしいリサイタルがこれまで24回も行われていたのか!と衝撃を受けた。本当に素晴らしかった!

 前半は、ブラームスの歌曲を7曲。「民謡」「ことづて」「日曜日」「暖かい空気はじっとして」「雨の歌」「ひばりの歌」「メロディのように」。

 自然な発声、驚くほど正確な音程、美しいドイツ語の発音、細かいところまで神経の行き届いた声の処理、良く響くバリトンの美声! そのような声で見事に雰囲気を作り出す。残念ながら、私はドイツ語を解せず、今回歌われた歌曲もきちんと意味を理解しているわけではないのだが、しかし、言葉から詩の世界が広がっていく。弱音をうまく使い、繊細な心も描く。私は少し前、吉田志門のテノールによる歌曲に衝撃を受けたが、加耒の表現にも同じように衝撃を受けた。本当に素晴らしい演奏!

 後半は「美しきマゲローネのロマンス」から5曲。何を隠そう、私はこの歌曲集が「冬の旅」よりも「詩人の恋」よりも好きなのだ! 若きブラームスの情熱の迸りを聴くことができる。私はその昔、フィッシャー=ディスカウとリヒテルのレコードでこの曲を知り、感動して繰り返し聴いたのだった。

 で、今回思ったのは、「もしかしたら、フィッシャー=ディスカウよりもいいかも!」ということだった。フィッシャー=ディスカウはもちろん舌を巻くほどのうまさなのだが、やはり「おじさんが若作りして、若者のマネをして歌っている」といった雰囲気がある。それに対して、加耒の歌は本当に若者らしい! 若々しい情熱を率直に歌っている。まさに率直に、中世的、ゴシック的な素朴な雰囲気のある世界を歌う。ピアノもそれをしっかりと再現する。

 最後に「4つの厳粛な歌」。これも私の好きな歌だ。私はハンス・ホッターのレコードでこの歌を知り、その後、フィッシャー=ディスカウ、ミヒャエル・フォレなどで聴いてきた。ただ、これについては、加耒の歌はまだ若すぎると思った。「マゲローネのロマンス」とは逆に、これは加耒が無理やり年齢を重ねた雰囲気を出している。そのような雰囲気をしっかりと出していること自体、すごいことだと思うが、やはり本当に老成したホッターのあのしみじみとした、いかにも老年のブラームスらしい諦観と嘆きの味は出ない。もちろん致し方のないことではあるが。

 それにしても、「マゲローネのロマンス」も「4つの厳粛な歌」も、私がこれまで聴いた実演(滅多に演奏されないので、数回しか聴いていない)の中では最も感動したのは間違いない。

 昼の部の後、夜の部があり、そこでも「マゲローネのロマンス」の別の曲が歌われるという。大いに心惹かれたが、私は5日間連続してコンサートに通って、二世帯住宅でくらす孫たちと5日間、夕食をともにしていない。今晩は久しぶりに孫たちの顔をみられると思っていたので、急いで帰った。

 吉田志門さんも近々「マゲローネのロマンス」を歌われるという。加耒さんは、「マゲローネのロマンス」の全曲を近いうちに歌いたいを言っておられた。二人の「マゲローネのロマンス」が聴けたら、どんなに幸せだろう!

|

« ビシュコフ&チェコ・フィル ビシュコフのチャイコフスキーに深く感動! | トップページ | ガードナー&読響 期待していたのだが・・・ »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ビシュコフ&チェコ・フィル ビシュコフのチャイコフスキーに深く感動! | トップページ | ガードナー&読響 期待していたのだが・・・ »