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ウィーン国立歌劇場公演「ばらの騎士」  感動の涙を流した!

 20251020日、東京文化会館でウィーン国立歌劇場来日公演「ばらの騎士」をみた。指揮はフィリップ・ジョルダン、演出はオットー・シェンク。素晴らしかった。興奮した。

 シェンクの演出はきわめてオーソドックス。ただ、すべての幕で舞台を狭く使っている。多くの演出では、すべての幕で奥まで使って、広い邸宅を示すが、今回はいずれも狭くして親密な空間を作っている。人物の動きについてはほぼ台本通りだと思う。

 ジョルダンの指揮はかなりアクティブというか、強い音でぐいぐいと音楽を進めていく。ロココ的な雰囲気は弱まって、かなりドラマティックになる。指揮者の要求によるのか、カミラ・ニールンドの歌う元帥夫人もかなり強い女性として描かれているように思う。オックスに対する怒りや年齢についての嘆きも、かなり強い感情を吐き出す。私としてはロココ的な雰囲気のほうが好きで、このようにすると遊び心というか、喜劇性というか、そのようなものが薄れる気がするが、これも一つのありかただろう。ただしもちろん、オーケストラの音は限りなく美しい。これがウィーンの音! 

 歌手陣は最高度に充実していた。とびぬけた歌手はいないが、アンサンブルがよい。いや、むしろみんなが突出した歌手というべきか。

 ニールンドは、このブログに何度か書いたが、武蔵野市民会館で20年以上前にリサイタルを聴いた時からのファンだ。2016年、縁あって、一度お会いして、オペラ関係者数人と一緒に飲んだこともある。今やワーグナー、シュトラウスの最大のソプラノと言って間違いない。気品があり、伸びがあり、しっかりとコントロールされた美声、しっかりした演技でこの役にふさわしい。

 オクタヴィアンのサマンサ・ハンキ―もこの役にふさわしい凛とした声で、演技的にも申し分ない。ゾフィーのカタリナ・コンラディも美しい声。この二人の二重唱は第二幕も第三幕もアンサンブルが完璧で、声の質も似ていて感動に震えるしかなかった。

 オックス男爵のピーター・ローズは、それほど喜劇性を強調せず、あまり下品ではない人物像を作っていた。あまり笑わせられないが、この方が本来のホフマンスタールやシュトラウスの意図に近いといえるのかもしれない。ファニナルのアドリアン・エレートは安定した歌で、老年の私としては身につまされる役を見事に歌う。この人は何をやっても本当にうまい!

 それにしてもよくできた台本と音楽だと改めて思った。本筋と関係がなさそうな場面でも、それがストーリー的にも音楽的にもその後の場面のある種の伏線となってつながっていく。娯楽性もあり、哲学的でもあり、ドタバタがあり、ほろりとさせる。すべての人物の心情が理解でき、感情移入できる。私はこのオペラを聴き始めた中学生のころは自分をオクタヴィアンと重ね合わせていた。その後、マルシャリンに、そしてオックスに重ね合わせ、近年はファニナルに重ね合わせている(さすがにゾフィーと重ね合わせたことはなかったと記憶する)。第3幕など、単に不倫をしていた年増女が若い男と別れるだけの話なのに、それぞれの人物の気持ちが痛いほどわかって涙なしにはいられない。

 いやあ、第1幕も第2幕もよかったが、第3幕は本当に素晴らしかった! 三重唱の美しさは別格だった。三人の女性の声がぴたりと合い、この上ないハーモニーをなし、それがまさに人生を歌う。舞台上の人物のあらゆる感情を追体験すると同時に、音楽的な美しさに至上の喜びを覚える。まさに至福の時間!! 私は三重唱、そしてその後の愛の二重唱の間、ずっと涙を流していた。

 ところで、第一幕冒頭の字幕についてちょっと問題を感じた。記憶に基づくので間違っているかもしれないが、冒頭のオクタヴィアンのセリフは字幕では、「かつてのあなたと今のあなたをだれもしらない」といったようになっていたと思う。だが、これでは意味が通じない。

 前にもこのブログに書いたことがあるが、この部分を補足して訳すと、以下のような意味だと私は思っている。「さっきのあなたがどうだったか、今のあなたがどうなのか、その両方を知っている人は、僕しかいない」。つまり、もっと率直にいうと、「さっきあなたはベッドの中であられもない姿で乱れていた。今は貴婦人らしく落ち着いている。その両方を知っているのは僕だけだ。ほかの誰も知らない」ということだと思う。いずれにせよ、もう少し状況がわかるように訳す必要があると思うのだが・・・。

 ともあれ、感動し、興奮した。満員の客だったが、スタンディングオーベーションが起こった。私も立ち上がって、涙を流しながら拍手した。

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