ビシュコフ&チェコ・フィル ビシュコフのチャイコフスキーに深く感動!
2025年10月21日、文京シビックホール大ホールで、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団来日公演を聴いた。指揮はセミヨン・ビシュコフ、曲目は前半にスメタナの「モルダウ」と、チョ・ソンジンが独唱者として加わってラヴェルのピアノ協奏曲、後半にチャイコフスキーの交響曲第5番。
「モルダウ」は私の好きな曲ではないのだが、ビシュコフが指揮をすると実に生き生きと聞こえてくる。安定したリズム、そこにくっきりと音楽が築かれていく。音楽的な物語があり、しっかりとした土台の上にその物語が語られる。感情任せにならない。きわめて論理的で秩序だっており、そこに高揚があり、音楽の大きなうねりがある。まさにモルダウという大河の「人生」のようなものが見えてくるかのよう。すべての楽器が見事に重なり合っている。チェコ・フィルの音も本当にしみじみと美しい!
ラヴェルの協奏曲も正攻法で音楽に挑んだかのような演奏だと思う。この曲はちょっとアメリカ的にしたり、フランス的にしたり、諧謔的な味をつけたりといった様々な味付けができると思うのだが。ビシュコフはそんな小細工はしない。真正面から楽譜に取り組み、そこから音だけを取り出したかのよう。だから、面白みはない。だが、そこから出てくる音は真摯で知的で研ぎ澄まされている。
チョ・ソンジンのピアノも本当に一つ一つの音が輝いている!高貴で真摯。珠玉の作品という言葉にふさわしい演奏だと思った。
ピアノのアンコールはショパンの有名なワルツ(だと思う。私はピアノはあまり聴かない。とりわけショパンに関心を持ったことがないので、恥ずかしながら、何も知らない)。これもとてもよかった。
後半のチャイコフスキーは、まさにビシュコフらしい演奏だった。きっとチャイコフスキー好きには物足りないだろう。感情の爆発がなく、「泣き」がない。我をなくさない。大きく高揚するが、形は崩れない。リズムが崩れないのだろう、ここでも、しっかりとした足取りで大きく音楽が進んでいく。豊かな歌があり、大きな高揚があり、深い思いがある。そして、チェコ・フィルから本当に美しい音を作り出す。弦が素晴らしい! クラリネットもファゴットも実に美しい。金管の威力もすごい。そしてじっくりと大きな物語が完結に向かう。「運命の動機」が変貌し、最後に壮大なファンファーレになる様子が見事に語られていく。あんまりチャイコフスキーらしいチャイコフスキーを聴くとげんなりする私は、だからといってあまりにそっけないとつまらないと思うのだが、ビシュコフのチャイコフスキーが最も納得できる。最終楽章では私は深く感動した。
アンコールは、まず「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲。この楽団でこの曲がアンコールに選ばれるとは思わなかったのでびっくり。が、冒頭のヴァイオリンの音に圧倒された。なんと美しい、なんと情感にあふれた音であることか! 涙が出そうになった。
最後のアンコール曲がドヴォルザークのスラブ舞曲。先日、プラハ・フィルで聴いたのと同じ曲(確か第15番)。席のせいかもしれないが、プラハ・フィルのときには団子状の音に聞こえたのだったが、今回は楽器の音色がしっかりと聞こえ、しなやかで猥雑でしかも繊細な舞踏が聞こえてきた。
4日連続のコンサート! 実は明日もコンサートに出かける予定。音楽業界に身を置いているわけではないのだから、ちょっとコンサートに行き過ぎているのを感じる。少々コンサート疲れというか、感動疲れがしてきた。
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