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オペラ映像「フィガロの結婚」「ホフマン物語」「白痴」

 修理に出していたPCがやっと戻って来て、私の書斎での作業も通常に戻った。電源がつかない、消えないだけのことなので安価ですぐに直ると思ったのだが、1週間ほどかかって費用も6万円弱。データは消えなかったのでありがたいと思うべきなのだろう。ただ、どういうわけか、デスクトップのいくつかの表示が以前と異なっており、新たに入れなおさなければならないソフトもあった。いやはや、PCは摩訶不思議な世界だ!

 いくつかオペラ映像をみたので、簡単に感想を記す。

 

モーツァルト 「フィガロの結婚」 20233月 ウィーン国立歌劇場

 先日(2025109日)、ウィーン国立歌劇場の来日公演で見たのと同じバリー・コスキーの演出。歌手陣も何人か重なっている。指揮はフィリップ・ジョルダンで、私が実演で聴いたド・ビリーよりもドラマティックでアクティブな演奏をする。時々、かなりドスがきいているというか、激しい表現も交える。どちらもいいが、私はこのジョルダンのほうが好みだ。

 歌手陣は日本公演以上の充実ぶりといえそうだ。全員が最高度に素晴らしい。とりわけ、アルマヴィーヴァ伯爵のアンドレ・シュエンと伯爵夫人のハンナ=エリーザベト・ミュラーが圧倒的。シュエンは強い音で傲慢な伯爵を見事に歌う。ミュラーは気品ある声でけなげな夫人を歌う。スザンナの演技はイン・ファンだが、声が出なくなったとのことで、オーケストラの横でマリア・ナザーロヴァが歌う。色気のある素晴らしい美声。それにしてもプロはすごい! 実演では声の方向で気づくのかもしれないが、映像を見る限り、演技と声が別の人だとはまず思えない。あれほどの動きの中でぴたりと重唱を含めて歌うなんて神業としか思えない。

 フィガロのペーター・ケルナー、ケルビーノのパトリツィア・ノルツ、マルチェリーナのステファニー=ハウツィール、バルトロのシュテファン・ツェルニ、いずれもこれ以上は考えられないほどの見事な歌唱。

 もちろん、実演のほうに大いに感動したが、きっと客観的に考えて、私の見た実演よりもこの収録された上演のほうがレベルが高かったといえそうだ。

 

オッフェンバック 「ホフマン物語」  20248月 ザルツブルク、祝祭大劇場

 バンジャマン・ベルナイムがホフマンを歌っている。この歌手の名前はどこかで聞き覚えはあったが、きちんとは認識していなかった。今回のホフマンを聴いてびっくり! ものすごい歌手だ! 高貴な美声で自在に歌う。自然でのびやか、しかもホフマンにふさわしい人間味。少なくともホフマン役にこれ以上の人がいるとは考えられない。

 ステラ、オランピア、アントニア、ジュリエッタのすべての役を歌うキャスリーン・リーウェックにも驚嘆する。もちろんこれまでにもすべてを一人で歌う歌手はいたが、これほど完成度の高かった歌手は稀だろう。ニクラウスやミューズを歌うケイト・リンジーはさすがの歌唱。ズボン役として男っぽくもあり、同時にきわめて色気があって、演技についても見事。リンドルフなどを歌うクリスチャン・ヴァン・ホーンも品位ある悪役がとてもいい。端役も含めて最高度に充実している。

 マルク・ミンコフスキの指揮するウィーン・フィルは、音色の美しさはもちろんのこと、躍動感があり、ドラマティックでもある。演出はマリアム・クレマン。どうやら、ホフマンをスター女優であるステラとの契約をとろうとする映画製作者(?)に見立てているようで、あれこれのパントマイムがなされるが、私はうんざりしてあまり熱心に見なかった。この頃、私は奇をてらう演出については、時間と労力の無駄だと考えて、あまり深く考えないようになった。よくない傾向だと思うが、やむをえない。

 

ヴァインベルグ 「白痴」20248月 ザルツブルク、フェルゼンライトシューレ

 ドストエフスキーの「白痴」をヴァインベルグがオペラ化したもの。ヴァインベルグにこんなオペラがあることを知らなかった。ただ、ひとことで言って、やはりドストエフスキーの複雑な長編をオペラにするのは無理があると思った。ムイシュキン、ロゴージン、ナスターシャ・フィリッポヴナというクセの強い登場人物を描き切れていない。この三人がドストエフスキーの登場人物の特性を持っていない。とりわけ、ナスターシャが薄っぺらで、単にエクセントリックなだけの女性になってしまっている。要するに、私はこのオペラにドストエフスキーの魅力をまったく感じなかった。

 ただ、そんなものだと割り切ってしまって、ショスタコーヴィチのオペラと同じようなものだと考えれば、オペラとしての魅力にあふれ、音楽はとても魅力的、演奏もとてもいい。ムイシュキンのボグダン・ヴォルコフ、ロゴージンのウラジスラフ・スリムスキー、ナスターシャのアウシュリーネ・ストゥンディーテ、アグラーヤのクセニア・プスカシュ・トーマスなど、いずれもしっかりと歌っている。指揮をするのは、グラジニーテ=ティーラというかなり若い女性。切れが良いし、オーケストラのコントロールも見事だと思う。

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