オペラ映像「ニーベルングの指環」「ルイーズ」
NHK/4Kで深夜にしばしば海外のオペラ公演が放送される。録画しておいたのをやっと観られたので、簡単な感想を記す。
「ニーベルングの指環」 1989年11月&12月、バイエルン国立歌劇場
NHK・BS4Kで放送されたもの。私は、この映像のLDが発売されてすぐに購入、DVD化された際も改めて購入して観た。今回、NHKの技術によって4K化されて、放映された。間違いなく、画質は向上している!
言うまでもなく、きわめてレベルの高い上演だと思う。ヴォルフガング・サヴァリッシュの指揮は、緻密にしてドラマティック。ニコラウス・レーンホフの演出も、近年のような読み替えでないのがありがたい。ジークフリートだけは中世風、ほかの登場人物は基本的に現代の服装と言えるだろう。細かいところで、黙り役の人物が登場したり、パントマイムがあったりして、演出家の意図が反映されるが、台本から大きく外れない。
歌手陣は充実している。私が圧倒されるのはジークフリートのルネ・コロとハーゲンのマッティ・サルミネンだ。私は二人とも実演で聴いている(1987年のベルリン・ドイツ・オペラの「リング」全曲公演のコロはすごかった!!)が、この公演でも抜きんでている! ヴォータンのロバート・ヘイル、アルベリヒのエッケハルト・ヴラシハ、ファフナーとフンディンクのクルト・モル、ローゲのロバート・ティアーはさすがというしかない。
ただ、私が少し不満を感じるのは、ブリュンヒルデを歌うヒルデガルド・ベーレンスだ。そうだった、思い出した。「この映像、とてもいいんだけど、ベーレンスが不調だ」とずっと思っていたのだった。
ベーレンスはカラヤン指揮、ウィーンフィルの「サロメ」のレコードに驚嘆して、私は大ファンだったのだが、このブリュンヒルデは、肝心の「ワルキューレ」第三幕と「神々の黄昏」第三幕の、まさにブリュンヒルデの聴かせどころで、声が割れてしまう。特に低音で苦しそう。このような指摘をあまり目にしたことはないのだが、私以外の人はあまりに気ならないのだろうか。
とはいえ、全体的にはきわめて充実している。「リング」の映像の最高レベルであるのは確かだろう。大いに楽しむことができた。
シャルパンティエ 「ルイーズ」 エクサンプロヴァンス音楽祭 2025年7月3・11日 アルシュヴェシェ劇場
NHK4Kで放送されたもの。
「ルイーズ」は、かつて東京オペラプロデュースの公演をみたことがあるが、有名なアリア以外、ほとんど覚えがなかった。シャルパンティエはプッチーニと同時代のフランスの作曲家だが、少なくともジャコモ・サグリパンティ指揮のリヨン国立管弦楽団の演奏はもっと現代的で鮮烈な雰囲気がある。
歌手は、ルイーズを歌うエルザ・ドライシヒをはじめ、きわめて充実している。ただ、クリストフ・ロイの演出で、場所がすべての幕を通して現代の病院内ということになり、どうやらすべてが精神疾患のルイーズの妄想ということらしい。そのためかもしれない、同じ歌手が別の役で出てきたりする。しかも、ドライシヒは神経質でおびえた態度を取り、少し異常な歌い方をする。
確かに、このオペラはいつまでも両親に子ども扱いされかごの中の鳥として愛されて苦しむルイーズの物語なのだが、このような演出だと、ルイーズの健気さや初々しさが表現されない。しかも、テレビ映像であるために、顔まではっきり映るので、登場人物がごっちゃになってしまう。私は東京オペラプロデュースの公演のほうをずっと楽しんだ気がする。
子離れできない親というテーマは、きわめて現実的で現代的だ。あまりに現実的すぎてオペラ的な深みに欠けるとはいえ、わざわざ読み替え演出にする必要はないだろうと思った。「ルイーズ」というめったに上演されないオペラまでも読み替え演出になるご時世を、私としては大いに嘆きたい気分だ。
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