ヤンセン&コジュヒン ロマンティックな歌心を満喫
2025年11月13日、東京オペラシティ コンサートホールで、ジャニーヌ・ヤンセン&デニス・コジュヒン デュオ・リサイタルを聴いた。素晴らしい演奏だった。私はふだん、ピアノに感動することはめったにないのだが、今日は、ヤンセンのヴァイオリンだけでなく、コジュヒンのピアノにも深く感動した。
曲目は、前半にシューマンのヴァイオリン・ソナタ第1番とブラームスの第2番、後半にクララ・シューマンの3つのロマンス Op.22とブラームスのヴァイオリン・ソナタ第3番。
実は私はシューマンの曲は少々苦手に感じている。妙にしつこくて、神経質で、「うーん、やっぱり精神疾患だ」と思うことが多い。それが魅力になってものすごい世界を感じることもあるが、だいたいにおいて私は苛立ちを覚える。ところが、ヤンセンとコジュヒンの手にかかると、なんと不思議なことに、まったくそのようなことがない。歌心にあふれ、ロマンティックで流麗。第2楽章の美しさたるや、ため息が出るほど。ヤンセンのヴァイオリンのニュアンスの変化も素晴らしいが、ピアノの粒立ちも素晴らしい。まったく、シューマンの神経質さを感じない。角が取れてしまいすぎている・・・という不満を感じる人もいるのかもしれないが、これほどロマンティックな歌心を聴かされたら、文句も言えない。
ブラームスの第2番も素晴らしかった。これも第2楽章にピアノとヴァイオリンの掛け合いが見事。ニュアンス豊かでしっとりと美しい。完璧に構築され、音の細部まで神経が行き届き、静かにしっとりと大きな世界を作り出していく。
後半のクララのロマンスは、まさに歌心を存分に聴かせてくれた。ブラームスの曲などの比べると少々物足りないが、歌心とともに精神の高貴さを感じさせる曲だと思う。これもとても良い演奏だった。
第3番は、かつて私はオイストラフのレコードを愛聴していたせいか、スケールの大きな、言ってみればベートーヴェンの「クロイツェル」のような曲と認識している。その点からすると、ちょっと物足りなく思った。スケールは間違いなく大きくない。そもそもそのようにとらえていない。繊細にして、しっとりとして内省的、そうでありながらも内面が徐々に燃焼していく。そんな演奏だった。これも第2楽章の緩徐楽章が美しい。この二人の第2楽章はまさに絶品だと思う。終楽章で大きく盛り上がるが、気品と歌心は失わない。
アンコールはドヴォルザークのソナチネ ト長調よりラルゲット(インドの歌)とブラームスの歌曲「野の寂しさ」のヴァイオリン版。いずれもしっとりとした演奏だった。
決して誇張しない、無理やり感動させようとしない、ただ音楽のニュアンスをしっかりと示し、完璧に音の処理をして聴かせる、そうすると天女の舞いのようなこの世のものとも思えないような音楽世界が浮かび上がってくる…そんな演奏だった!
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