下野&東響の第九 高貴な本格的第九!
2025年12月6日、ミューザ川崎で、東京交響楽団の名曲全集第213回を聴いた。指揮は下野竜也。曲目は、ワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲とベートーヴェンの交響曲第9番。秋山和慶さんの指揮が予定されていたのだが、秋山さんのご逝去によって下野さんに変更になった。
私は、気づいたのが遅かったので、チケットを購入したときには4階席しか残っていなかった。学生のころは常に最も安い席で聴いていたが、ちょっと経済的な余裕ができてからは久しぶりの4階。ミューザの音響はとてもいいが、やはりすべての楽器がひと固まりに聞こえてくるのは致し方ないと思った。
演奏はきわめて安定。ただ、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」に関しては、あまりに安定しすぎて威力のない演奏に思えた。壮大でも荘厳でも精緻でもなく、安定路線をゆっくりと進む感じだった。
第九についてはとてもよかった。まさに本格派というか。高貴な演奏だと思う。小細工はなく、真正面からしっかりと演奏する。構成がしっかりしており、構成が緩みかけるとしっかりとテコ入れして、音楽の生命を吹き込んでいく。そうやっているだけなのに、スケールの大きな生命のある音楽になっていく。そして、荒々しさというのか、ベートーヴェンには不可欠と思われるそのような要素もしっかりと描かれ、私たちの魂に訴えかける。ただ、4階から聴いているせいもあるのかもしれないが、もっと音楽の渦巻くような勢いがあってほしいと思った。
独唱陣については、ソプラノの三宅理恵の声の美しさに惹かれた。ますます美声に磨きがかかった気がした。メゾ・ソプラノの花房英里子、テノールの山本耕平、東響コーラスもよかった。
秋山和慶さんが亡くなったのは今年の1月だった。もう1年近くたつことに感慨を覚える。第九の後、下野さんが再登場して、秋山さんのことを少しお話になった。ただ、何しろ私の席は4階で、しかも下野さんが話している間、中国語らしい言葉をしゃべっている人がいた(もしかしたら、下野さんの話を中国人の仲間に同時通訳していたのかもしれない)ためによく聞き取れなかった。その後、全員で「蛍の光」を演奏。
とても良いコンサートだった。
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