フォン・オッターのクリスマスソング 気品にあふれる温かいクリスマスの歌!
2025年12月8日、オペラシティコンサートホールで、アンネ・ゾフィー・フォン・オッター クリスマスソングズを聴いた。
フォン・オッターについては、私は、1994年のカルロス・クライバー指揮、ウィーン歌劇場来日公演の「ばらの騎士」のオクタヴィアンを見て衝撃を受けて以来、気にかけてきた。シノーポリ指揮、ドレスデン国立歌劇場の「ナクソス島のアリアドネ」の録音で作曲家を歌っているが、私は歴代最高の作曲家だと思っている。ブラームスやフランスものの歌曲も素晴らしい録音を残している。まさにオクタヴィアンや「作曲家」にふさわしい気品あるれる声と容姿、透明で高貴な声、知的でありながらもチャーミングな歌いまわしに私は魅了されてきた。
そのフォン・オッターももう70歳だという。そして、きっと最後の来日でクリスマスソングを歌う。そうか、私より4歳年下だったのか!と思った。自分のことを考えると、声も出なくなり、体も動かなくなり、気力もなくなっている。フォン・オッターがどんな歌を聴かせてくれるか、ちょっと不安を抱きながら会場に向かった。
相変わらずの気品ある、美しい舞台姿! 声についてはかつての清澄で透明な声は失われていた。それはやむを得ないだろう。初めのうちは、ちょっと音程もぶら下がり気味といった感じがした。だが、無理のない曲順でだんだんと喉がこなれてくるのだろう。シューベルト、ヴォルフ、ブラームスと歌ううちに、素晴らしい歌の世界が広がってきた。いやはや、歌も容姿も70歳とは思えない!
それにしても、ドイツ語、フランス語、英語、そしてきっとフィンランド語でも歌われたのだろう。パーセルから、ペルト、そしていわゆるポップスに属する歌まで幅広く、まさに多様な歌が歌われた。しかも、格調高く高貴なのだが、けっして取り澄ましていない。親密な世界を作り上げ、心優しい雰囲気を作り出す。そうした雰囲気は以前からあったが、それが一層増している。それには、ピアノのクリストフ・ベルナーとギターのファビアン・フレドリクソンの功績もあったのだろう。
前半の終わりのほうに歌われたフランス歌曲に、私はとりわけ心惹かれた。フォーレの「ノエル」、ドビュッシーの「もう家のない子たちのクリスマス」、ラヴェルの「おもちゃのクリスマス」は、暖かく静かで親密な世界を作り上げて感動的だった。
後半は、シベリウスの「5つのクリスマス歌」の中の2曲も、とてもしみじみとして美しかった。その後、マイクを使って、いわゆるクラシックではない歌が歌われた。スティング作曲You Only Cross My Mind in Winter、B.アンダーソン作曲Little thingsなどなど。これについても見事だと思った。クラシック系の歌手がマイクを使って、これほど違和感なく歌うのを、私はこれまで聴いたことがないような気がする。私はまったく知らない領域なのだが、ガガとかセリーヌ・ディオンといった人たちに決して負けていない歌いまわしではないか。しかも、しっかりとフォン・オッターの気品を醸し出している!
アメリカ的な派手なクリスマスではなく、ヨーロッパ的な家庭の温かさにあふれた地味な、しかし楽しいクリスマスが広がった。
フォン・オッターとともに年月を経てきた私には、とてもうれしいクリスマスの歌だった!
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- 新国立劇場「イタリアのトルコ人」 演出の工夫に感心!(2026.10.07)
- カルテット・アマービレ&今井信子のブラームスの感動!(2026.10.06)
- 濱田芳通&アントネッロの「マタイ受難曲」 ドラマティックな人間ドラマ・群衆ドラマ!(2026.10.04)
- オペラ映像「ラ・ボエーム」「ナブッコ」「ドン・パスクヮーレ」「ばらの騎士」(2026.09.24)
- サーナ・テクセレの「メサイア」 加耒徹は指揮者としても素晴らしかった!(2026.09.22)

コメント