METライブビューイング「アラベッラ」 最後の二重唱に感動のあまり心が震えた!
東劇でMETライブビューイング、リヒャルト・シュトラウスの「アラベッラ」(私はこのブログでは一貫してこのオペラを「アラベラ」と呼んできたが、今回は公開名にあわせる)をみた。
このオペラについては、高校生のころからショルティ指揮のレコードでなじんできたが、実は「ばらの騎士」や「サロメ」や「エレクトラ」や「ナクソス島のアリアドネ」ほどの魅力は感じなかった。とはいえ、もちろん好きなオペラではある。2025年11月22日の公演。
演出はオットー・シェンク。メトロポリタン歌劇場でしか見られない伝統的な演出だが、今やこのようなリアルな舞台のほうが新鮮味を感じる。台本通りの大道具、仕草、服装。
指揮はニコラス・カーター。初めて名前を知った。若い指揮者だ。かなり主知的な指揮だと思う。官能的に、華美に、豪華に・・というのではなく、ドラマを際立たせ、少し鋭めに音楽を展開していく。マンドリカの怒りの場面など、胸のすくようなオーケストラのうねりがある。そこからほんのりウィーン情緒が漂ってくる。これはこれで素晴らしい。
歌手陣はそろっている。とりわけアラベッラのレイチェル・ウィリス=ソレンセンとマンドリカのトマシュ・コニエチュニの二人は圧倒的だと思った。
ソレンセンの声は透明で高貴。まさにアラベッラにふさわしい。初めのうちは、威力不足だと思ったが、後半、説得力のある歌いまわしになった。コニエチュニについては文句なし。マンドリカにしてはちょっとあか抜けしすぎているといえなくもないが、率直な表現、怒りの表現もみごと。最後のソレンセンとコニエチュニの二重唱は、私は心が震えるほどに感動した。「ばらの騎士」の第三幕の三重唱と同じくらいに感動した。何と美しいんだろう!と思った。
高校生のころからレコードでなじみ、舞台も可能な限り触れてきた(ただ、残念ながら、サヴァリッシュ指揮でポップがアラベラを歌ったバイエルン国立歌劇場の日本公演は息子の手術日と重なって観られなかった!)し、映像にも触れてきたが、これほど感動したのは初めてだった。きっと二人の歌手とともに指揮のカーターの功績も大きいだろう。
ズデンカのルイーズ・アルダー、マッテオのパボル・ブレスリックもとてもいい歌手だと思う。さすがメトロポリタン歌劇場だけあって穴がない。すべての歌手が見事にその役を演じている。
それにしても、これも本当によくできたオペラだと思う。ホフマンスタールの台本にもほれぼれする。没落貴族の伯爵と伯爵夫人の造形も見事、マッテオらのアラベラを追いかける男たちもうまく描き分ける。シュトラウスの音楽の豊饒さについては言葉をなくす。彩りをつけるために、ミッリという登場人物のコロラトゥーラのアリアをはさむのもうまい! 第三幕の幕が上がる前、マッテオとズデンカの交わりを暗示する場面の官能性もありながら、それ以上にドラマティックに盛り上がる音楽にも舌を巻く。
ただ、このオペラを見るたびに私がどうにも引っかかるのは、それまで親友だと思っていた人間が実は女だったとわかって、素直に妻にしようと思うだろうか??という点だ。そんなことを考えるのは野暮だとはわかっているが、「おれがマッテオだったら、おいおいちょっと待ってくれ…というだろうなあ」と思うのだ。
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