« BCJのバッハのコラールカンタータ300年Ⅸ まさに至高の世界! | トップページ | 新国立劇場「リゴレット」 歌手陣はとてもよかった »

東京二期会オペラ劇場「カヴァレリア・ルスティカーナ」「道化師」 きわめてレベルの高い上演

 2026年2月13日、東京文化会館大ホールで東京二期会オペラ劇場「カヴァレリア・ルスティカーナ」「道化師」を観た。ロイヤル・オペラ・ハウスとの提携公演で、指揮はアンドレア・バッティストーニ、演出はダミアーノ・ミキエレット。

 全体的にとてもレベルの高い公演だった。ミキエレットの演出はかなりリアリティを重視するもので、二つのオペラはほぼ同じ舞台が使われる。時代的には20世紀半ばくらいを連想させる服装と言っていいだろう。「カヴァレリア・ルスティカーナ」ではパン屋の店が中心に描かれ、「道化師」では同じ建物が劇場として描かれる。いずれも田舎の薄汚れた建物として存在感がある。

 そして、「カヴァレリア・ルスティカーナ」の有名な間奏曲が演奏されている間に「道化師」の登場人物であるネッダとシルヴィオの密会が描かれ、「道化師」の間奏曲の間に、お腹の大きくなったサントゥトッツァを母親ルチアが抱きしめる場面が挿入される。2作が関連付けて演出されているわけだ。

 ただ、私としては、どちらもずっと建物を中心としており、野外場面がないのが少し不満だった。とりわけ、「カヴァレリア・ルスティカーナ」の前半は、シチリアの田園風景があってこそ、悲劇が生きてくると思う。それにテーマがテーマだけに、いくらか遠景がないと、息苦しさを感じてしまう。もしかしたら、それがミキエレットの狙いかもしれないが。

 演奏については、バッティストーニの指揮はダイナミックであり、なおかつ繊細でなかなか良かった。東京フィルハーモニー交響楽団も精妙な音を出して、見事。さすがバッティストーニ。

 ただ、歌手のせいなのかもしれないが、声の張り上げあいのようになって、小さな音の緊張感があまり感じられなかった。「カヴァレリア・ルスティカーナ」では、穏やかな田園風景が徐々に陰惨な悲劇の場に変わっていく、ぞくぞくするような緊張感があり、「道化師」では心の奥の屈折した残忍さがふつふつと湧いてくる恐ろしさがあるはずなのだが、それが十分に聞き取れなかった。

 歌手陣は、全体的には健闘していたと思う。サントゥッツァの土屋優子はしっかりした声、トゥリッドゥの村上公太も張りのある声。ローラの郷家暁子、アルフィオとトニオの大川博、ルチアの小林紗季子、カニオの下村将太、ネッダの中川郁文、シルヴィオの又吉秀樹、いずれもよく声が出ている。ただ、みんなに感じたのは、声を前に出そうとするあまり、声のコントロールが少し甘くなっている気がした。私の個人的な好みなのかもしれないが、大声で朗々と歌うよりは、正しい音程で細かいところまで神経の行き届いた声で歌ってくれる方がずっと感動する。

 ともあれ、このレベルの上演をみるのはとてもうれしい。

|

« BCJのバッハのコラールカンタータ300年Ⅸ まさに至高の世界! | トップページ | 新国立劇場「リゴレット」 歌手陣はとてもよかった »

「音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« BCJのバッハのコラールカンタータ300年Ⅸ まさに至高の世界! | トップページ | 新国立劇場「リゴレット」 歌手陣はとてもよかった »