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インキネン&都響 ともあれ圧倒された

 2026年3月19日、サントリーホールで東京都交響楽団第1039回定期演奏会Bシリーズを聴いた。指揮はピエタリ・インキネン。曲目は、前半にラヴェルの「ラ・ヴァルス」と、ソリストにキット・アームストロングが加わってサン=サーンスのピアノ協奏曲第4番、後半にプロコフィエフの交響曲第3番。

「ラ・ヴァルス」については、私は少々疑問に思った。少なくとも、私の好きな「ラ・ヴァルス」ではなかった。私は、色とりどりの断片がだんだんとワルツの形を成し、それがまるで色彩の龍のように飛翔し天空を舞って、最後に崩落していく・・・といったイメージを持っている。が、今回の演奏はいつまでたってもワルツの形を成して飛翔しない。音が断片のままでラヴェル風の粋でしゃれていて、しかも不気味な龍が現れない。どうやらインキネンはこの曲を私が考えるようにはとらえていないらしい。

 まるで音を分解させ、音の構築物を作り出しているかのよう。まさに20世紀後半の「現代音楽」として再構築したような「ラ・ヴァルス」だった。・・・もしかしたら、右の前方の座席の、やけにコントラバスの音が聞こえる席だったので、そのような印象を持ったのかもしれないが・・・。

 サン・サーンスの協奏曲はとてもよかった。アームストロングの恐ろしく粒立ちのよいクリアな音とインキネンの表現がぴたりと一致したのかもしれない。まるで20世紀後半の音楽のような響きだと思った。1875年に初演された曲とは思えない。情緒におぼれることなく、知的に音楽が展開し、あれこれと冒険しながらも整然と音楽が進んでいく。豪華絢爛な音の洪水があり、超絶技巧があるが、アームストロングがやすやすと弾いていることもあって、まるで映画のように最後にはめでたしめでたし。そんな感じを抱いた。アームストロング、若き天才として売り出されているようだが、確かにすごい!

 ソリストのアンコールはサン・サーンスの左手のための6つの練習曲OP135より第2番「フーガのように」だとのこと。ピアノ曲に疎い私は、最初はバッハかと思った。が、しばらくして現代曲だろうと思った。掲示を見るまでサン・サーンスとは思わなかった。そんな感じの演奏だった!

 後半のプロコフィエフは、これぞインキネンという演奏なのだろう。都響の音を存分に引き出し、見事なコントロールで音の洪水を整理し、爆発させ、飛び立たせる。私は、この曲をよく知らないので、ただ圧倒されて耳を傾けるばかりだった。オペラ「炎の天使」で使われたモティーフがいくつも出てくるとのこと。確かに、不気味で不吉な響きが充満し、それが次々と形を変えていく。それがきらびやかにならず、どこか深みのある音になるのは、都響の特質なのだろうか。

 本当のことを言うと、インキネンは私の好きな指揮者ではない。実は、「どうもよくわからん」と感じることが多い。今日も、そう思った。が、それでも、サン・サーンスとプロコフィエフには圧倒された。あと何度か聴くと、インキネンのやろうとしていることが理解できるようになるのだろうか。

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