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東京春音楽祭「さまよえるオランダ人」 感動・感激・興奮!

 2026年4月5日、東京文化会館で、東京春祭ワーグナー・シリーズ vol. 17 「さまよえるオランダ人」(演奏会形式)を聴いた。指揮はアレクサンダー・ソディ、管弦楽はNHK交響楽団(コンサートマスターは長原幸太)。素晴らしい演奏だった。感動し、感激し、興奮した。

 序曲からエネルギーにあふれるドラマティックで、まさに疾風怒濤の演奏! これほどのハイテンションが最後まで続くのかと心配したが、本当に最後の最後まで力にあふれる演奏だった。ソディという指揮者、私は一昨年、コヴェントガーデンで「フィデリオ」を聴いて、とてもいい指揮者だと思ったのだったが、その時は初めから猛烈な熱気で飛ばすのではなく、じっくりと音楽を進めていった。だが、今回は快速で猛烈な熱気。15時10分頃に始まって、休憩なしで17時10分くらいで終了した。第3幕にカットがあったと思うが、それにしても、かなりの快速だと思う。しかし、少しも形が崩れない。N響もまったく乱れず、強い音で、緊迫感にあふれた激しくおどろおどろしいドラマを作り出した。「救済のテーマ」なしのヴァージョンだった。

 歌手陣も最高度に充実していた。特筆するべきは、まずはゼンタのカミラ・ニールンドだろう。繊細な声からホール中にビンビンと響く劇的な声まで、完璧にコントロールされた声で歌い上げる。バラードの歌声には魂が震えた。エリックのデーヴィッド・バット・フィリップも驚くべき美声による強い声。この人の歌は映像ではいくつも聴いて圧倒的な歌手だと思っていたが、初めて実演を聴いて、その凄さを味わうことができた。エリックという役はこのオペラの中で存在感が薄いのだが、今回のような歌唱で聴くと、これが重要な役だとつくづく思う。

 ダーラントのタレク・ナズミも、ワーグナー作品の「王さま」系にふさわしい深い声が魅力的だ。マリーのオッカ・フォン・デア・ダメラウ、舵手のトーマス・エベンシュタインも、これだけの役で出演してもらうにはもったいない歌声。ただ肝心のオランダ人役のミヒャエル・クプファー・ラデツキーは少し声量がなくて、オランダ人としての魅力に乏しかった。もう少しデモーニッシュな声がほしい。とはいえ、ニールンドとの第2幕の二重唱は緊迫感にあふれていて、十分に感動できた。

 エベルハルト・フリードリヒの合唱指揮による東京オペラシンガーズはさすがの迫力。このオペラでは合唱の質が大事になるが、見事にドラマの中心を作り出していた。

 ニールンドによるバラードやニールンドとラデツキーの二重唱のほか、ニールンドとバット・フィリップの二重唱、ダーラントのアリア、エリックのアリアも聴きごたえがあった。私は第2幕以降、息をつくのも忘れて音楽に浸った。

 ワーグナーは演奏会形式に限る!と言いたくなる。音楽への集中を妨げる余計な演出がなく、ワーグナーが意図したままの世界を耳にすることができる。音楽だけでこんなに雄弁で、こんなにドラマがあるんだ、と改めて思う。初期の、まだワーグナーらしさが十分に発揮されていない「さまよえるオランダ人」でさえも、これほどまでに素晴らしい! 

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