NBS「マタイ受難曲」配信、そしてオペラ映像「クリスマス・イブ」「ムツェンスクのマクベス夫人」
4月1日! 以前はこの日は、「エープリル・フール」だということで、学校でもテレビなどでも大いに話題になったものだが、このごろ、そんな様子がない。私としては、今日から自転車の乗り方について厳罰化されたことの方が気になる。
車道を自転車が通るのは絶対に危険だと思う。左側通行についても、道路状況によってはきわめて危険なことになる。私自身はあまり自転車に乗らないが、娘が子どもたちの送り迎えに使っているので、心配でならない。全国的に大事故が起こってしまうのではないか。そうならなければいいが!
そんななか、音楽映像をいくつか見たので、感想を簡単に記す。
J.S.バッハ 「マタイ受難曲」 オランダバッハ協会配信
鈴木雅明がオランダバッハ協会のオーケストラを振り、ソリストに何人かの日本人が参加する「マタイ受難曲」。生配信され、その後、YouTubeでも見られるようだ。
バッハコレギウムジャパンBCJのこのところの完成度の高さも圧倒されるほどだが、オランダバッハ協会NBSの演奏も素晴らしい!
BCJの音に慣れていると、ちょっと音の雰囲気が違うので、初めのうち違和感があったが、いやいやこちらも名手ぞろい。すぐにぐいぐいと引き込まれていった。楽器奏者たちも圧倒的だが、歌手陣もそろっている。
エヴァンゲリストはニコラス・マルロイ。しなやかでとてもいい。イエスなどのバスを歌うのは、ステファン・マクラウド。格調高く気品あるバスの声。日本人では、ソプラノの安川みく、テノールの吉田志門、バスの加耒徹。これ以上考えられないような独唱陣だと思う。安川の澄んだ声はこの曲に本当にふさわしい。吉田の35番のアリア「耐え忍べ」はまさに絶品。こんなに感情がこもりながらも、「マタイ」を逸脱しない歌を初めて聴いた。加耒の「己を清めよ、わが心よ」も躍動感ある歌に心をわしづかみにされた。まさに世界最高レベルの歌唱だった。最後の合唱もこの上なく敬虔に、そして美しく静まった。
大いに感動した。同時に、バッハ演奏における日本人の力に大きな誇りを抱いた。
リムスキー=コルサコフ 「クリスマス・イブ」 バイエルン国立歌劇場 2025年12月10・13日
NHK BSKで放送された。日本では、というか、むしろロシア以外では、というべきなのだろう。リムスキー=コルサコフの真価はあまり知られていない。私自身、数年前にようやく気付いたばかり。だが、オペラ作曲家としてのリムスキー=コルサコフはシュトラウスに引けを取らないと思う。「金鶏」「皇帝の花嫁」「見えざる町キーテジと聖女フェヴローニャの物語」「サトコ」などは大傑作だと思う。「クリスマス・イブ」もなかなかの傑作!
今回のバリー・コスキー演出、ウラディーミル・ユロフスキ指揮によるバイエルン国立歌劇場の公演は、このオペラの魅力を存分に見せつけるものになったといえるだろう。
まず、演出が楽しい。派手な色彩と大袈裟な化粧と演技によって喜劇性を高めている。そして、ゴーゴリ原作の滑稽で不気味な魔女の世界が展開する。明るくてドタバタのゴーゴリ! そして、色彩的で美しい音楽! ユロフスキの指揮もメリハリをつけて面白く音楽を展開する。歌手陣も全員がそろっている。女帝(ヴィオレッタ・ウルマナ)、村長(セルゲイ・レイフェルクス)、チュブ(ドミトリー・ウリアノフ)、オクサナ(エレナ・ツァラゴヴァ)、ソロハ(エカテリーナ・セメンチュク)、いずれも愉快で不気味でおもしろい。特に新しい解釈はないと思うが、ともあれ、このオペラをこんなに楽しいものにしてくれた上演に感謝!
ショスタコーヴィチ 「ムツェンスクのマクベス夫人」 ミラノ・スカラ座 2025年12月7日
NHK BSで放送された。指揮はリッカルド・シャイー。実は、シャイーはショスタコーヴィチの、とりわけ劇音楽を得意にしている。聴いてみると、確かにきっとロシア的ではないのだろうが、切れがよく、活気にあふれて、前衛時代のショスタコーヴィチにぴったりの演奏だ。セルゲイの死体が発見された後の警察署に舞台が移ったときの音楽など本当に猥雑感にあふれていて素晴らしい。
カテリーナを歌うのはサラ・ヤクビアク。きっとカテリーナはこんな容姿でこんな雰囲気の女性だったのだろうと思わせる歌唱と演技だ。見事だと思った。舅ボリスを歌うアレクサンドル・ロスラヴェッツはまさに暴君の味を出している。見事な声! セルゲイはナジミディン・マヴリャーノフ。声はしっかりしているが、この人は顔で損をしていると思う。どう見ても、セルゲイのような利己的で支配欲の強い女たらしには見えない。純朴で善良な人間に見えてしまう。演技力不足という面もあるのかもしれないが、映像で見ると、その点に違和感を覚える。
ワシリー・バルハトフの演出では、カテリーナとセルゲイが、逮捕後、警察の取り調べを受けて、過去を再現するという形で場面が展開する。舞台の放送が始まる前にNHKが付した注釈によると、「生々しいショスタコーヴィチの音楽はそのまま演じると滑稽になりかねない」という理由からだという。まあ、それはその通りだし、確かにうまく舞台を転換して自然な流れにしているので、うまい方法だと思うが、私は生々しいショスタコーヴィチの舞台を観たかったなあ、と思わないでもない。
とはいえ、2017年のザルツブルク音楽祭でのヤンソンス指揮の鮮烈な映像に匹敵する上演をみられて、とても満足だ。
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