ブッフビンダーの弾き振りのベートーヴェン協奏曲 第4番、第3番に興奮
2026年4月4日、東京文化会館大ホールで、ルドルフ・ブッフビンダーのピアノ・指揮によるベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲演奏の初日を聴いた。管弦楽は東京春祭オーケストラ(コンサートマスターは豊嶋泰嗣)。曲目は、前半にベートーヴェンのピアノ協奏曲 第2番と第4番、後半に第3番。
ピアノ曲をあまり聴かない私でも、もちろんブッフビンダーの演奏はCDやテレビ放送で聴いたことがある。実演を聴きたいものだと思っていたが、東京春音楽祭でベートーヴェンの協奏曲を聴くことができて、とてもうれしい。
第2番を聴いている間は、もちろんとても良い演奏ではあるものの、さほどの感動は覚えなかった。恐ろしく粒立ちの良い美音! 表面的に美しいというよりも、質感があり、深みのある輝きがある。小手先の技は使わず真正面からの正攻法の音楽。形式感がしっかりしていて、力感があり、抒情がある。ただ、曲の魅力のせいかもしれないが、いいなあ…という印象で終わっていた。
が、第4番の第1楽章の途中から、私は突然、音楽にぐいぐいと引き込まれていった。ブッフビンダーは、少なくとも私の席からは、あまり手を振っているようには見えず、指揮をしている雰囲気は感じられない。が、オーケストラがぐんぐんと盛り上がっていった。そして、オーケストラとピアノがぴたりと一致して、華やかになりすぎず、知的な抑制のきいたエネルギーにあふれる音楽が広がり始めた。精鋭のオーケストラが素晴らしい! いや、もちろんピアノもすごい!
第2楽章のオーケストラとピアノの緊張感にあふれる対話、そのあと、抒情がほとばしる。その部分もまるで音のドラマのように展開していく。そして、第3楽章。生きることの喜びが湧き出すかのよう! ブッフビンダーの指揮の名人技なのか、それともコンサートマスターの豊島さんが仕切っているのか。
後半の第3番はもっとすごかった。第1楽章は緊張感にあふれているが、ピアノの音がとても美しくて豊かなので、すんなりと音楽のダイナミックな流れに乗ることができる。この曲についても、私はオーケストラの掌握に驚いた。ブッフビンダーは指揮しているように見えないのに、この一体感は何事だ! 躍動して高揚していく。
第2楽章は静かな叙情に浸る。しかし、弛緩せずに音楽が深まっていく。そして、終楽章。大きく飛躍していく。交響曲第5番と似た生への讃歌のようなエネルギー溢れた音楽になっていく。しかし、ブッフビンダーの音はあくまでもクリアで、形が崩れない。そうであるだけにいっそう格調高く喜びが爆発する。素晴らしいと思った。興奮した。
ベートーヴェンは交響曲もいいが、ピアノ協奏曲もいいなあ!とあらためて思った。
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