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新国立劇場「愛の妙薬」 ヴィターレとロマーノにほれぼれした

 2026年5月27日、新国立劇場でドニゼッティ作曲「愛の妙薬」を観た。

 とても楽しかった。素晴らしい上演だった。

 歌手陣がまず充実している。アディーナのフランチェスカ・ピア・ヴィターレは高音が美しい。張りのある声で自在に歌う。低音がちょっと苦しいところがあったが、このくらいの瑕疵はまったく気にならない。容姿も文句なし。演出意図なのか、マリリン・モンローを意識しているように見える。ドゥルカマーラのマルコ・フィリッポ・ロマーノはまさにこの役にふさわしい軽妙で躍動感ある歌。第二幕のこの二人の二重唱は聴きごたえがあった。ほれぼれした。

 ネモリーノのマッテオ・デソーレも丁寧に歌って、もちろん悪くない。「人知れぬ涙」ではもう少し声の威力がほしいと思ったが、愚直で誠実な男をしっかり歌っていた。ベルコーレのシモーネ・アルベルギーニは不調なのか、声が伸びていなかった。ジャンネッタの今野沙知恵は細めの声だが、この役にはこれがぴったり。とてもよかった。新国立劇場合唱団もいつものことながら調和のとれた勢いのある声が見事。

 指揮のマルコ・ギダリーニも緩急自在というか、熟練の演奏で、ドニゼッティの音楽の楽しさを存分に聴かせてくれた。巨匠の演奏というタイプではないが、ドニゼッティの音楽としては、このように軽やかで躍動感があるのがいい。東京フィルハーモニー交響楽団もとてもきれいな音を出していた。私は第一幕の途中からぐんぐんと引き込まれていった。今日が最終日であえるせいか、すっかりこなれた音になっている。

 演出はチェーザレ・リエヴィ。このオペラの肝になる、愛の妙薬の登場する「トリスターノとイゾッタ」の書物をモティーフにして、あちこちに書物や、そのタイトル、表紙が現れる。遊び心あふれた演出だった。「人知れぬ涙」をネモリーノが歌う時、上から10枚程度(?)のA4くらいの大きさの紙が舞い落ちてきたが、あれは本のページを象徴したものだったのだろうか。まさに本の世界を舞台化したようなおとぎ話の世界だった。明るい色彩もとても楽しかった。

 そういえば、「トリスターノとイゾッタ」のタイトルがセリフで語られるとき、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の和音がハープシコードで聞こえたが。これはよくやる遊びなのだろうか。私は初めて聴いたような気がする。

 私はドイツ系のオペラが好きで、10数年前までイタリアオペラはほとんど観なかった。ドニゼッティにも特に関心はなかった。が、だんだんとドニゼッティ好きになってきた。肩の凝らないエンタメ・オペラとして、最高におもしろいと思う。今日も世界最高レベルとは言わないまでも、世界的レベルのドニゼッティのオペラを堪能できた。

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