上森の究極の9曲を堪能!!
2026年8月29日、浜離宮朝日ホールで、上森祥平チェロ・ソナタ演奏会 2026〈究極の9曲〉を聴いた。第1部と第2部に別れており、13時からの第1部でバッハの無伴奏チェロ組曲全曲、18時からの第2部でベートーヴェンのチェロ・ソナタ第3・4・5番が演奏された。まさに究極の9曲! ベートーヴェンのソナタのピアノを演奏するのは福富彩子。 素晴らしい演奏だった。
バッハは、1・4、5・3、2・6の順に、2曲ずつ、途中20分の休憩を入れて演奏された。全体的に、ゆったりとしたテンポによるふくよかで自由な雰囲気の演奏だった。若手のチェリストのようにアグレッシブに演奏するわけではない。もっと余裕があり、潤いがあり、しなやかでスケールが大きい。神経質にならずに、おおらかな印象を与える。これがこの人の持ち味であり、この人の人格でもあるのだろう。ほかの演奏家でしばしば感じるような信仰の深さや崇高さはあまり感じない。いかにも人間的な演奏と言ってよいだろう。それはそれでしみじみといい。
ただ、連続して演奏されるせいで、やはりどうしても、曲の雰囲気の違いがあまり明確にはわからなかった。そのため、私は少々退屈に感じたところもあった。演奏者は違いを弾き分けていたかもしれないが、私には残念ながら十分に伝わらなかった。
とはいえ、私は第3番はダイナミックで開放的で素晴らしかった。音楽の愉悦を覚えた。第6番も、大きな高揚と躍動を覚えた。素晴らしかった。
ベートーヴェンには、私はバッハ以上に感動した。上森はバッハの時よりも強い堂々たる音でアタックを効かせて演奏。ピアノの福富も素晴らしかった。ベートーヴェンらしい芯があってダイナミックな音! 勢いがあり、まさに「ブリオ」にあふれていると思った。小気味よく強い音が出てきてスケール大きく展開していく。しかも、ピアノもチェロも歌心があり、みごとに二つの楽器が絡み合っていく。
第3番は圧倒的だと思った。旋律が際立ってくっきりしている。第5番の終楽章のフーガも圧巻! 3曲を続けて聴いたことがなかったが、どの曲も名曲だと改めて思った。
上森は9曲の、しかもきわめて高度なテクニックと精神性を必要とする曲を弾いているのに、少しも疲れを見せない。ほんとうに素晴らしい演奏家だ!!
アンコールには、上森さんの息子さんが登場して、ベートーヴェンの交響曲第6番の終楽章のピアノ三重奏曲版のさわりの部分が演奏された。ヴァイオリンの音色に特徴があったが、大いに楽しめた。
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