松島理紗の「マリアの生涯」に圧倒された!
2026年8月7日、代官山教会で、松島理紗(ソプラノ)、ジョー・ハウソン(ピアノ)のデュオリサイタルを聴いた。曲目は、ヒンデミットの歌曲集「マリアの生涯」。
「マリアの生涯」はリルケの詩に基づく歌曲集で、70分ほどかかる難曲! 私はこれまで実演を聴いたことがなかった。録音も、グレン・グールドがピアノ伴奏をし、ロクソラーナ・ロスラックが歌ったものを数回聴いたことがあるだけだった。しかも、ヒンデミットはこの曲を何度も改訂したので、グールドのものは1922年・23年版、今回のものは1948年版だった。要するに、私はほとんど初めて聴いたに等しい。
私は、松島の学生時代から知っている。多摩大学のゼミでクラシック音楽のコンサート企画を行っているときに、演奏をお願いしたことがある。たまたま紹介されて歌ってもらったのだったが、その声の完成度、表現力に圧倒された。当時から、プロにまったく引けを取らなかった。
そして、ドイツに留学し、ドイツと日本で舞台を積んで、今や、押しも押されもしない現代音楽を演奏するソプラノの最高峰の一人といってよいのではないかと思った。この無調(だと思う)のとんでもなく難しい、しかも70分ほどかかる歌を、完璧な音程、完璧な声のコントロールで、マリアの波乱に満ちた生涯をみごとに再現しながら、途中、水も飲まずに歌いきる。
ピアノも素晴らしかった。私の知らない、若いイギリス出身のピアニストだが、きわめて現代的でクリアだが、深みがあって、ぴたりと歌に寄り添っている。
この曲は本来の私の守備範囲ではない。だから、もちろん批評めいたことは語れない。だが、まったく退屈しなかった。それどころか、マリアの誕生、受胎告知、イエスの誕生、イエスの死と復活、マリア自身の死という奇跡に満ちた波乱万丈の人生をたどり、マリアの生涯に圧倒され、松島の歌の力に圧倒され、息をのんで聴き続けたのだった。受難の場面、そして、最後のマリアの死を歌う3つの曲では、私も涙を流しそうになった。
3回連続で声楽を聴いた。いずれも素晴らしかった。若い才能が次々と花を開き始めている。多くの人にこれらの才能を知ってほしいものだ。
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