カルテット・エーレン 精妙なラヴェルに感動!
2026年9月7日、浜離宮朝日ホールでカルテット・エーレン第2回定期演奏会を聴いた。昨年だったか、旗揚げ公演を聴いて大いに感銘を受けた。今回のプログラムはラヴェルの弦楽四重奏曲とベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番! 聴かないわけにはいかない。
カルテット・エーレンは、ソリストとしても活躍している若手4人のメンバー(戸澤采紀、島方瞭、戸原直、佐藤晴真)から成る。いずれも名手たちだ。
まずはラヴェル。精妙にして緻密で繊細。軽やかだが、緊張感にあふれている。戸澤のヴァイオリンの音があまりに研ぎ澄まされていて美しい。シャープな音だが、音そのものが美しいので、刺激的になりすぎない。ほかのメンバーも完璧なアンサンブルで音を組み立てていく。
フランス的とは言えない気がする。この四人はドイツで活躍中だとのことで、そのせいかもしれない。むしろ、シェーンベルクなどの音を感じさせる。そして、時にフランスの演奏家たちがラヴェル演奏で強調するような諧謔性やユーモアもない。徹底的に真面目で、徹底的に透明。その中に魂の躍動があり、精神世界への肉薄がある。すべての楽章が同じような雰囲気で演奏されたが、循環形式で同じテーマが楽章をまたいで登場するので、これでよいのだと思う。4つの楽章によって精密な音の世界が完結する! 凄い!と思った。こんなラヴェルの弦楽四重奏曲を初めて聴いた。
第4楽章の途中でチェロの弦が切れた。佐藤が楽屋に引っ込んで、しばらくして第四楽章の初めから再び演奏。緊張感が途切れなかった。
後半のベートーヴェンも素晴らしかった。美しくて精妙な演奏だと思う。ベートーヴェン的な力任せのところはあまり感じない。実をいうと、私の個人的な趣味からすると、もう少しスケールが大きくて、もう少しアグレッシブであってほしいのだが、もちろん、これはこれで素晴らしい。ラヴェルと同じように、精妙で鮮烈で緊張感にあふれ、透明な美にあふれたベートーヴェンだった。こちらの曲では、楽章ごとの性格を描き分けているように思った。第2楽章プレストも見事。そして、第5楽章カヴァティーナの美しさは圧倒的だった。このような美しさはこの団体にぴったりだと思う。まさに精妙なカンタービレ!
そして、いよいよ「大フーガ」。私は暴力的なまでに生々しいこの楽章が大好きなのだが、この団体が演奏すると、もちろん暴力的にはならない。精緻にして強い美音がくんずほぐれつ圧倒的な異界を作り上げていく。生命の華というでも表現するような音楽のエッセンスを作り出す。
ラヴェルとベートーヴェン、どちらも素晴らしかったが、今日の演奏に限って言えば、ラヴェルの方に私はいっそう感激したのだった。
各メンバーがソリストとして活躍するのだと思うが、ぜひ弦楽四重奏団としての活動をこれから先も意欲的に続けてくれることを心から願う。
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