小堀勇介のロッシーニを堪能した!
2026年9月4日、浜離宮朝日ホールで、小堀勇介テノール・リサイタルを聴いた。ピアノ伴奏は久保山菜摘。
曲目は、かなりマイナーなものばかり。前半は歌曲で、ドニゼッティの「スルタンの女」。ベッリーニの「6つのアリエッタ」より6曲(「マリンコニーア」「行け、幸運のバラよ」「愛する美しきニーチェ」「たとえ私にできなくても」「許してくれ、愛しい人」「喜ばせてあげて」、ブリテンの「ミケランジェロの7つのソネット」より「ペンやインクと同じように」「貴女の瞳を通して見れば」「善良な魂」、ロッシーニの「別離」「ボレロ」。
後半はオペラのアリアで、モーツァルトの「羊飼いの王様」より「太陽に向かって広がる雲は」、「ポントの王ミトリダーテ」より「あの薄情な裏切り者を」、ヘンデルの「タメルラーノ」より「力強く喜んで私は死のう」「邪悪な者よ、お前に戦いを」、ロッシーニの「セミラーミデ」より「 ああ、どこに試練などあろうか」、「オテッロ」より「どうして聞き入れてくれないのですか」
輝かしくて明るい強い美声による歌曲と歌劇の世界が繰り広げられた。よく通る声で。ホール中にびんびんと響く。高音が何とも素晴らしい。この声だから、もちろん内省的にはならない。ブリテンの歌曲は、以前、吉田志門の歌、碇大知のピアノで聴いたことがあったが、本当に同じ曲か?と疑いたくなるくらい、雰囲気が違っていた。吉田の歌が緊張感にあふれる内省的な歌だったのに対して、小堀は自己主張の強い外に向かう歌とでもいうか。もちろん、いずれも素晴らしい。ロッシーニは特に躍動感があり、爆発力があり、ここぞというところで声を輝かしく響かせる。観客席からブラヴォー、ブラヴィーの声が上がる。
ピアノの久保山もしっかりしたテクニックで歌を支える。ただ、私は、ちょっと遠慮しすぎではないかと思った。もっと自分を前に出して自己主張してもいいのではないか。伴奏に甘んじようとしすぎているような気がした。私は、学生時代の久保山の演奏を何度か聴いて、その実力のほどはよく知っている。遠慮せずにもっとぶつかっていたら、もっと面白くなっただろうと思った。
やはり、小堀の歌はロッシーニが素晴らしいと思った。アジリータも見事。ロッシーニの歌の愉悦を堪能できる。ここまでロッシーニを歌える日本人歌手がいることを誇りに思う。
アンコールは、ドニゼッティの「愛の妙薬」の「人知れぬ涙」。とてもよかったが、しっとり歌うか、盛り上げるかで少し中途半端になった気がした。もう一曲のアンコール曲、ロッシーの歌曲「ラ・ダンツァ」は本当に素晴らしかった。楽しくて、躍動感があって、ユーモラスで、躁状態になる! 私はチェチーリア・バルトーリの録音でこの曲をよく聴いているが、それに匹敵する素晴らしさだと思った。
マイナーな曲が多かったせいかもしれないが、小堀勇介という大人気歌手のリサイタルのわりには客が少なかったのが残念。この上なく楽しい素晴らしいコンサートだった!
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