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オペラ映像「ラ・ボエーム」「ナブッコ」「ドン・パスクヮーレ」「ばらの騎士」

 異常なほどに雨が続いている。私の住まいの近くでも大雨になっている。今日は少し晴れ間が見えているが、いつまで晴天が続くか・・・。

 オペラ映像を数本みたので、簡単に感想を記す。

 

プッチーニ 「ラ・ボエーム」 2024年7月 アレーナ・ディ・ヴェローナ

 私はプッチーニ不感症であって、これまでどのオペラも感動して観たことがないのだが、今回、今話題のジュリアナ・グリゴリアンがミミを歌っているというので、関心を持ってみてみた。やはりあまり感銘を受けなかった。

 ジュリアナ・グリゴリアンはもちろんとてもいいのだが、私は同じ姓のアスミク・グリゴリアン(どうも親戚関係ではないらしい)ほどの圧倒的な歌唱力を感じることはできなかった。

 ほかの歌手たちについてはいずれもとても見事な歌唱だと思う。ロドルフォのヴィットリオ・グリゴーロはさすがの歌唱だが、ちょっと声のかすれを感じるところがあった。ムゼッタのエレオノーラ・ベッロッチ、マルチェッロのルカ・ミケレッティ、ショナールのヤン・アンテム、コッリーネのアレクサンダー・ヴィノグラードフ、いずれも好演!

 アルフォンソ・シニョリーニによる演出については、きわめて穏当なもの。第1幕ではじめから、屋根裏部屋にミミが登場して、ロドルフォに関心を寄せていることがはっきりと示される。そこまでやらなくてもいいだろうとは個人的には思うのだが、まあこういうやり方もあるだろう。しかし、第3幕で、ミミとロドルフォの二重唱の後、同じ服を着た男女がバレエを踊るが、その必要性があるとは私には思えない。観客サービスなのだろうか。

 指揮はダニエル・オーレン。私はプッチーニのオーケストレーションに納得できないので、演奏について批評することはできない。

 

ヴェルディ 「ナブッコ」 2025年7月 アレーナ・ディ・ヴェローナ

 とても良い上演だと思う。

 まず何といっても、アビガイッレのアンナ・ネトレプコがやはり素晴らしい。歌い出しのレチタティーヴォ風の部分の低音については、ちょっと無理やりドスの効いた声にしようとしている様子があって不自然だが、高音は本当に美しくて伸びがある。ドスを効かせようとしているときよりも自然に歌う時のほうがずっと迫力がありリアリティがある。

 ナブッコのアマルトゥヴシン・エンクバートも余裕のある安定した低音がとてもいい。モンゴル人だという。この役にふさわしい。

 イズマエーレのゲレアーノ・サラスは不調なのかもしれない。声が出ていないし、音程が崩れる。ザッカリアのクリスティアン・ヴァン・ホーンは立派な声だが低音で音程が怪しくなる。フェローネのフランチェスカ・ディ・サウロはしっかりした声でとてもいいが、華を感じないのが少し残念。

 指揮はピンカス・スタインバーグ。ドラマティックにまとめて、とてもいいのだが、有名な合唱部分の盛り上がりがもう少しあってもいいのではないかと思った。ステファノ・ポーダの演出はわかりやすくてドラマに入り込める。私としてはありがたい。

 

ドニゼッティ 「ドン・パスクァーレ」(ドイツ語歌唱)1977年3月30日 ミュルツツーシュラーク、フォルクスハウス

 ネットを検索しているうちにこのDVDを見つけた。序曲の間に流される映像で示される通り、これはどうやらウィーン国立歌劇場のオーストリア・ツアーでの地方公演のようだ。モノラル録音。

 1977年というから、エディタ・グルベローヴァがベーム指揮のザルツブルク音楽祭の「ナクソス島のアリアドネ」でツェルビネッタを歌って世界を驚かせた(私は、事前知識なしにFM放送を聴いて衝撃を受けた!)翌年だ。

 歌手陣はとてもレベルが高い。ドン・パスクァーレのオスカー・チェルヴェンカもマラテスタのハンス・ヘルムもエルネストのルイージ・アルヴァも堂に入った歌いっぷりで素晴らしい。当時、世界的に活躍していた歌手たちだ。しかし、ノリーナ役のグルベローヴァが登場して歌い出したら、その圧倒的な歌に周囲がかすんでしまう。後年のグルベローヴァほどの技巧はないが、何しろ声が美しい。なんという伸びと躍動感のある美声であることか! グルベローヴァはこのころから凄かった!!

 ただすべてドイツ語で歌われるので、イタリア語に慣れていると、かなりの違和感がある。十分に楽しいし、音楽的に満足するが、これまで観てきたイタリア語の歌唱とはまったく異なる世界が展開する。オペラにとって言語がいかに大事かを痛感する。ただ、早口の部分はドイツ語でも十分にドニゼッティ的だとは思った。

 それにしても、ドイツ語でこのオペラを見ると、リヒャルト・シュトラウスの「無口な女」とストーリーが似ていることを一層強く感じる。「無口な女」の台本を書いたツヴァイクは意識していたのだろうか。

 指揮はエクトル・ウルボン。今回初めて名前を聞いたような気がする。名指揮者ではないのかもしれないが、かなりテンポが速く、生き生きした音楽を作り出しているので、私としてはまったく不満はない。演出はヘルゲ・トーマ。地方巡業ということかもしれないが、簡易な装置による素直な演出で、とてもわかりやすい。

 ともかく、若きグルベローヴァのものすごい歌唱を聴けただけでも大満足の映像だ!

 

リヒャルト・シュトラウス 「ばらの騎士」バイエルン国立歌劇場 1979年5、7月

 昔、レザーディスクだったと思うが、この映像は繰り返し観た記憶がある。DVDも持っているつもりでいたが、先日、探してみたが見つからない(いや、それどころか、所有していたつもりの「ばらの騎士」のDVDやBDが何種類も見つからない! 引っ越しの際にどこかに紛れ込んで、そのままになっているのだろう!)。もしかしたら、そのうち出てくるかもしれないとも思ったが、入手できなくなるのが怖くて、あわてて購入した。

 久しぶりに観たが、やはり凄い! 凄いなんてもんじゃない! 第一幕冒頭からクライバーの音にびっくりする。一つ一つの音がまるで生きもののようだ。生命力があり、潤いがあり、切れ味鋭く、しかも躍動的! 第3幕冒頭も言葉をなくす! とんでもない指揮者だったなあ、と改めて思う。

 マルシャリンのギネス・ジョーンズとオクタヴィアンのブリギッテ・ファスベンダー、そしてゾフィーのルチア・ポップ。伝説の3人と言ってもよいと思う。歌はもちろん、演技も容姿も、オペラ歌手としては申し分ない。うっとりする。ただ、少し残念なのは、第3幕の三重唱はほんの少し不発なような気がする。もっと感動的な三重唱をこれまで何度か観たことがあるような気がした。

 オックス男爵のマンフレート・ユングヴィルトは少しだけ声が弱いと思うし、ファニナルのベンノ・クッシェももう少しおかしみがほしいとは思うが、もちろん十分に楽しめる。演出はオットー・シェンクのオーソドックスなもので、本来の台本に忠実で、ウィーンの香りにあふれており、これまた申し分ない。何はともあれ、クライバーすごい!!

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