サーナ・テクセレの「メサイア」 加耒徹は指揮者としても素晴らしかった!
2026年9月22日、ミューザ川崎シンフォニーホールで女声合唱団サーナ・テクセレ第6回演奏会を聴いた。曲目は、女声三声によるヘンデル「メサイア」(編曲 冨岡正男)。指揮とバリトン独唱は加耒徹、ほかの独唱は 山口清子(ソプラノ)、横瀬まりの(アルト)、中嶋克彦(テノール)、管弦楽はプロムジカ・バロック・アカデミー。オーケストラは10数名、合唱は50名程度の小規模な編成による。近年の古楽による演奏スタイルと言ってよいだろう。
サーナ・テクセレはバリトンの加耒徹が音楽監督を務める女声合唱団だとのこと。加耒徹のバリトン歌手としての実力はよく知っている。日本最高峰の歌手だ。私は何度か感動して聴かせていただいた。が、指揮者としてはどうだろう、女声三声はどうだろうと思いながら聴いてみた。
が、冒頭から驚いた。素晴らしい演奏だった。感動した。私は実をいうと、これまで大昔に、1度か2度しか「メサイア」の実演を聴いたことがない。録音も数回だけだろう。面白く聴けるのだが、いつも途中で退屈してしまっていた。が、今回は、まったくそんなことはなかった。最後まで集中し、感動して聴くことができた。
加耒の指揮者としての力量にまず驚いた。ややアグレッシブな演奏と言ってよいのではないかと思う。先日、必要があってビオンディ指揮、エウローパ・ガランテの「四季」を聴き返してみたが、そのようなアプローチに近い。切込みが鋭く、きりりと引き締まって、躍動感があり、ぴしりと音が決まる。しかも、完璧に音をコントロールして、無駄がない。そして、プロムジカ・バロック・アカデミーとサーナ・テクセレの力量によるのだろうが、音が限りなく美しい! そこに、間違いなく信仰心がほとばしっているのがわかる。まさに超一流の指揮ぶりではないか!
オーケストラも素晴らしい。全員が名人だと思う。トランペットにとりわけ感嘆した。合唱も、おそらくアマチュアだと思うのだが、本当に美しい声! 初めは女声合唱であることに違和感を覚えたが、途中から気にならなくなった。
独唱陣も素晴らしかった。ソプラノの山口、テノールの中嶋は安定した歌で見事に歌う。アルトの横瀬は少し硬い感じがしたが、大健闘。そして、やはり指揮の加耒が、ひょいと観客席の方に向かっていきなり圧倒的な声で歌うのには驚いた。第三部のアリアは圧倒的だった。ほんのちょっと声が詰まったのが残念だが、本番ではこのくらいのアクシデントは致し方ない。声の安定といい信仰心あふれる歌いまわしと言い申し分ない。感動するばかり!
アリアも合唱も、そしてあの「ハレルヤ」も本当に良かった! 感動した。興奮した。「メサイア」を聴いてこんなに感動したのは初めてだった。
これまで歌手出身の指揮者っていたっけと考えた。近年ではプラシド・ドミンゴがタクトをとっている。バーバラ・ハンニガンが歌いながら指揮をしている。そうだ、それからナタリー・シュトゥッツマンがいる(彼女の歌も指揮も聴いたことがある!)。そのくらいしか思いつかない。ミシェル・コルボなど、合唱団を立ちあげて、その後、指揮者として活躍した人は大勢いるが、彼らもきっと歌手として名を成した人ではなかっただろう。加耒徹はきっとこれから指揮者として大成するだろうと思った。
それにしても、今回も客の8割以上が女性だと思う。加耒徹のファンは女性が多い。稀に見るイケメンなのでそれも仕方がないのだが、この素晴らしい音楽家を女性だけのものにしておくのはあまりにもったいない。もっと多くの男性にこの人の歌を、そして指揮した演奏を聴いてほしいものだ。
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