オペラ彩公演 オペレッタ「こうもり」を楽しんだ
2024年12月7日、和光市民文化センターサンアゼリア大ホールで、オペラ彩第41回定期公演 オペレッタ「こうもり」をみた。
オペラ彩は、1984年から埼玉県を中心に活動する特定非営利活動法人。41回にわたって自主公演を続けてきた。理事長の和田タカ子さんと少しだけお話したが、今回もまた、指揮を予定していた天沼裕子さんが体調不良で降板するなど、大変なことの連続だったという。これまで、これほどのレベルのオペラ公演を続けてこられるには並大抵のご苦労ではなかっただろう。今回も驚くほどの水準の「こうもり」が仕上がっていた。大いに感心し、大いに楽しんだ。
指揮は上野正博、オーケストラはN響で活躍した永峰高志がコンサートマスター。輪郭のはっきりした明確な音を刻んで、わくわくした愉快な世界を作り出していく。初めのうち歌手陣とかすかにタイミングがずれるところがあったが、すぐに解消された。歌手陣は歌も演技も達者な人がそろっている。
アイゼンシュタインの石塚幹信は本当に芸達者で声量があって見事にこの役を演じた。ロザリンデの牧野元美も声量豊かな美声で容姿も美しい。チャルダーシュは見事だった。フランクの佐藤泰弘は、これまた声量豊かで朴訥とした味わいを出してとてもおもしろい。ファルケの村田孝高は、ちょっと音程の不安定を感じたが、声量があって堂々たる歌。アデーレの奥村さゆりは、少し声は小さいが精妙な歌いまわしが魅力的。オルロフスキーの泉関洋子は演技面ではちょっと棒立ちだと思ったが、声に威力があり、歌いまわしも、この不思議な役を見事に歌っていた。特筆するべきは、フロッシュの武井雷俊だろう。芸人はだしの軽妙な語りで会場の笑いを誘っていた。
合唱には一般市民や高校生も加わっているという。夜会に出席する紳士淑女を演じていたが、しっかりと役割を果たしていた。見事!
演出は直井研二。オーソドックスな舞台。歌はドイツ語だが、セリフは日本語。アドリブを加え、つじつまを合わせてわかりやすくするようにセリフを加えたり、削ったりしている。第三幕前半のフロッシュの登場する部分は大胆なカットをしている。それが成功している。舞台に立ち慣れない人々をうまく演技指導して、パーティの場面など、少ない人数でも違和感なく作る手腕には驚く。
楽しい音楽、おもしろいストーリー、見事な演技。オペラを初めてみる客も多かったようだが、皆さんがとても楽しんでいる様子がよくわかった。最後は大喝采。
日本中で市民オペラが上演されている。どの団体も難題にぶつかりながら、驚くべき成果を上げているようだ。これから先、ますます困難が押し寄せるだろうが、ぜひとも頑張ってほしい。今回は、オペラ彩の活動をみて、とても頼もしく思ったのだった。
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